昼間、喫茶店で勉強をしていると、おばさんたちの会話が耳に入ってきた。「先のことはわからないわ。もう30年たったら、一体、日本は残っているのかしら。」
夕方パソコンの画面を見ていると、やけにうるさいサイレンの音。
私はまた老人が一人倒れたか、くらいに思っていたが何回も聞こえるのでベランダに出てみた。西の空の一画に煙が立ち込めている。ぎょっとして見ると炎が盛大に上がっている。
ガールフレンドのAさんの家の近くだ、とあわてて自転車で出かけ、呼び鈴をならすと出てきたAさんは気がついていなかった様子。二人でベランダから眺めたがなかなか消えぬ。
「隣の通りの坂をおりたあたりだろうか。」
「見に行けないかしら。」「そんなことをするもんじゃない。邪魔じゃないか。」
ようやく落ち着いて家に戻る頃、火事場周辺の道路は警察によって封鎖されていた。
中学同期の渡辺君に出会ったから様子を聞いてみると「坂を下りたあたりに建売が沢山ある。そのうち2件が燃えてしまったそうだ。」
オバマ大統領が勝利宣言をした。
獲得選挙人数が6日午後1時現在でオバマ氏349人、マケイン氏162人、得票数は前者が6253万票、後者が5545万票、勝った州では選挙人を総取りするのか、得票数に較べて獲得選挙人の数に大きな差がでた。私は日本の小選挙区制と同じ特徴と感じた。
黒人初、47歳ということで、マスコミは、歓迎一色である。某テレビ局などこれでアメリカに真の民主主義がやってきたかのように伝え、当選した後、新大統領家族を映し出しているむこうの新聞を取り上げ素晴らしいことと褒め称えている。
しかしどこまで喜んでいいものやら。日経新聞「オバマの米国と世界」なる緊急報道には
「オバマ氏に勝利をもたらした最大の要因は、現在のブッシュ政権への苛立ちだ。強引なイラク戦争によって世界から孤立。金融危機により超大国の威信は地に落ちた。国内でも暮らしへの不安が高まった。」「米国民の人種差別意識がなくなったわけではない。だが、理想を語るスタイルが不安の時代に希望を求める人々の心情に合致。従来は棄権していた少数派や若者が大挙して投票に足を運んだ。」とある。
オバマ氏の演説をチェックする。「私たちはできる」と題した演説は、確かに人々に希望を持たせる。「民主主義の力に疑問を呈する人がいるなら、今夜がその答えだ。今度の選挙は違うと信じて、投票所に並んだ人々がその答えだ。老いも若きも、共和党支持者も民主党支持者も、黒人も白人も、同性愛者もそうでない人も、健常者も障害者もすべてが出した答えだ。我々はアメリカ合衆国(の一員)なのだ。」
なかなか素晴らしい。今まで民主主義はなかった、という風にも聞こえるけれど・・・・。アメリカという言葉がひときわ光っている。その旗にみんな協力して頑張ってくれ、といっているようにも聞こえる。
しかし彼がやろうとしていることは余りはっきり見えてこない。
金融危機や地球温暖化対策、イラン核問題への取り組みなど具体的にはどうしようというのか。日米関係は一体どうなるのが。一部では保護主義が台頭し、アフガンに部隊を増派する意向のようでそのために日本に一層の協力をもとめるのではないか、そんな声も聞かれる。要するに「やってみなければわからない。」・・・・米国株式市場は、新政権に早速二日続きの大暴落という強烈なプレゼントを贈った。
ところで現在のこの不安な状況は、日本に非常によく似てはいまいか。
麻生政権が懸命に努力しているにもかかわらず国民的人気は上がらない。その最大の原因は「長く続いた自民党政権へのいらだちだ。イラク戦争はしなかったけれども、中国など新興国の発展により日本の相対的地位は低下、米国のサブプライムローン問題に端を発した世界不況で、国民の特に将来の暮らしへの不安が高まっている。」
違うのは、民主党にはオバマ氏のような格好いい魅力のある人物がいないことだ。日本という国をどう守り、どう発展させてゆくのか、明確なヴィジョンが感じられないことだ。民主党政権ができるとしたら、私は希望よりも不安を感じる。一度やらせてみたらいい、という意見は多いけれど、その結果が悪く出た場合、火の粉を浴びるのは我々庶民だ!
あの火事、きっと一瞬の油断は住んでいる人たちの生活を一変させるに違いない。これから冬に向かって寒さが増す、他人事ながら一体どうしようというのだろう。
(後記)翌日現場に行ってみた。昔、用水路であったところを埋め立てた道に面した2件が火災を起こしたようだ。「道が狭くて消防車が入れなかったのよ。」と近所のおばさんたちが噂していた。
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