723「何かの始まりに立ち会う・・2」(12月28日(日)晴れ)

あの「文明の衝突」を書いたサミュエル・ハンチントン教授が亡くなった。冷戦後の対決が国家や地政学的対決ではなくイデオロギーよりも宗教や文明の違いであると説いた。西洋、イスラム、日本、中国など8大文明圏にわけ、文明のブロック化が進むと書いた。ある人が言うように此の書の狙いは西欧社会の優位性を証明し、非西欧社会、たとえば中国などの人権運動・民主化運動にストップをかけるなど狙いがあったのかもしれない。しかしその後の世界史の動きはあたらずといえども遠からずの動きをしたことは事実だ。
またその著、及び続編の中で、日本は独立した文明圏であることは誇ってよいが、所詮は小さな文明圏で、東南アジアでは中国に継ぐナンバー2である。仮想ストーリーでは中国と米国が戦争になり、日本は両者の間をふらふらし、結局は中国につき破壊される、となっていた。

721「何かの始まりに立ち会う」で私は「現在の変化(サブプライム問題等)は、歴史の中で見ればそれほど大きな変化ではない、という気もする。」と書いた。すると某君が@超大国:アメリカから中国・インドへの転換過程A安価な原油が支えてきた経済成長の図式が崩壊し新しいモデルに転換・・・・などとして転換期と考えたい、と主張した。ハンチントン教授ならばどのように考えるであろうか。私としてはそのような転換点であることは確かかもしれないが、点として捉えるほどのものか、と疑問を持つ。
大きな理由は今回の変化がサブプライム問題に端をはっした一時的な世界経済システムの混乱では終わりに近づいていると考えるからだ。なぜかといってあの無理な貸付は3年前に終わっている。其のつけにあたる大きな変化が徐々に大きくなり、今年の半ば頃から世界経済に急激に影響を与えた、と見るからだ。

日本の輸出企業は、円高と消費不振で大きな影響をうけた。此の変化に企業が急には対応できず、決算が悪くなり、雇用調整を行うなど現場が混乱した。しかし日本の輸出産業が他所の国の産業にとって変わられたわけではない。企業はこのような状況に対応すべく舵を切り始めている。消費が少なくなったから、生産を縮小しなければならぬ。円高であるから卸値をたとえ需要がさらに下がってもあげなければならない。生産・流通も合理化しなければならない。其の一つが派遣切りなどの形で現れているのだろうけれども。
アメリカから中国・インドへの転換過程という見方は人口比なのかGDPなのか分からないけれども今に始まったことではない。確かにドルの権威が落ちてきていることは事実だ。しかし世界が人民元中心に動く社会が来るとは考えにくい。安価な原油が支えてきた文明という構図も分からない。原油は一時バーレル150ドル近くになり、200ドルになるのも近いとさえ騒がれた。それが今では40ドルを割っている。本当のあるべき原油の価格はどのくらいなのか推定の仕様もない。ただ投機的なものも含めて需要と供給の谷間で揺らいでいるに過ぎないとも見える。(・・・・ただ基本的には資源の大切さは変わらずいづれ徐々に上げてくるとは思うが。)

日本経済新聞に最近「次の世界・・・・危機の後に」という有名人に聞く形のレポートが掲載され始めた。今までに経済財政担当相与謝野馨氏、米ジョンズホプキンス大フランシス・フクヤマ氏、大和総研理事長武藤敏郎氏、元駐日中国大使陳健氏に聞いている。
大体共通しているのはつぎのようなことであろうか。
@相対的には弱くなってきているもののドルを基軸通貨とする米国中心の経済体制は変わらない。
A自由経済の思想は守る必要がある。しかし世界経済はここ数年過度に拡大した。それが今回破綻したといえる。これからは市場経済と国家介入が必要で今は其の調整期だ。
B日本は、戦略を考え直し省エネや環境などの分野に投資し、競争力をつける必要がある。また巨額の金融資産を使って世界経済の建て直しに貢献することも求められる。

世界の流れを見るときに、私は人間の知恵、及び其の進歩というものを見くびってはならないと思う。確かに過去に何度も戦争が起こったにもかかわらずいまだに繰り返しているではないか、という意見もあるが、国際連盟ができ、それがナチズムなどの台頭で失敗したとなれば国際連合を作ったではないか。今では其の主導の下に世界が動いている。ハンチントン教授の言う文明・宗教の対立は起こっているけれども、世界を破滅に導くほどではない。今回の問題でも世界が全体で解決しようという風潮が出ている。それぞれの文明・宗教を尊重しながら、全体として世界経済を安定・発展させる持続モデルが構築されようとしている、と見るべきではないか。そうとすれば、案外簡単に問題が回避できるのではないか。日本の経済も、目先は苦しいが、来年の半ば頃には株価も含めて復調の兆しをみせるのではないか、と私は期待している。

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