ガールフレンドのAさんと国立劇場に新春歌舞伎を見に行く。珍しく三本立て。まずは市川団十郎の「象引」。正義の味方の主人公と悪人が可愛い?象を引き合うところが魅力。「十返りの松」は筝曲。
三番目の「いきじ競艶仲町(いきじくらべはでななかちょう)」、鶴屋南北による「双蝶々曲輪日記(ふたつりょうちょうくえうわにっき)の書き換え狂言である。いきじは「ごんべんにうら」。辞書になく困ってしまう。二番目はともかく前後の二つはいづれも面白かった。和服の女性も目立ち、正月らしく大変楽しいひと時を過ごすことができた。考えてみれば「歌舞伎もシェクスピアも最初は大衆の娯楽であった。芸術などと大仰にかまえず面白ければそれでいい、其の面白いがために芸がある、と考えるべきと思った。
帰りに荻窪で食事をしたが、Aさんが少し飲みすぎて余り調子がよくなかった。家まで送って8時前に帰宅。私もすぐに寝たが、12時頃目がさめた。最近もらった同じ会社に勤めていたBさんの「歌」のメールのことを思い出した。私は「歌」もまったく素人。それでも自分流の「歌」で答えたい。「歌」は自分の気持ちが素直に現れていればいい、昔の歌人だって先生についたわけじゃない、とタカをくくって恥ずかしながら・・・・。
寝床に鉛筆と紙を持ってきて思いつくままに書き付けた。夢を文章化するのと同じことで、翌日さらに思いを深めることが出来る。
Bさんからのメールは次のようなものだ。
「本日テレビにて歌会はじめを見ました。今年の御題は「生」です。
色々な和歌を聞いているうちに一首できました。
お題は天皇陛下の出題ですから、うやうやしく震える手でおし戴かねばなりません。それで震題ですね。
謹みて震題「生」を詠ず
*十八年 ともに生きてし 愛猫を 送りて既に 半年経ぬかな
来年の御題は「光」だそうです。
「光」を詠ず
*以前より 光いや増す 我がこうべ 去り行く髪の 跡を偲ばむ」
・・・・Bさんは猫を本当に愛していたんだ・・・。私などからは理解できぬ。十年以上一緒だった一匹の飼い犬が4、5年前になくなったけれど、葬式の真似事を済ませると私はすっかりわすれてしまった。私は、幸いなことに、この歳にしては、髪は黒いしまだ健在な方だ。しかし気にする人は、ものすごく気にするらしい。
********以下、お答え(案)
謹みて震題「生」を詠ず
*五十年 先のこの世は いかなるか 三月の孫の 尻を拭きつつ
*生きるとは 資力、財力 好奇心 みんなそろって 躍れる限り
*木槿(もっきん=むくげ)は 夕べを知らず 我もまた 同じ部類と 気づくこのころ
・・・孫は5人目の男の子のこと。先日椿山荘でお食い初めをやった。子供心に分かるらしく抱かれて機嫌が良かった。写真のときにこにこしており大成功。しかし別室に鯛や歯固めの石などのった膳が運ばれ、儀式になったときにはすっかり目を閉じていた。糞を二度もした。もちろんオムツを替えたのは、親で私は部屋の外で待機していたのだけれど、歌はこのくらいのインチキはしないと・・・・。
二首目、これは一般的に言うことは憚られるのかもしれない。幸いなことにまだ其の条件がある程度そろっている私からは・・・・。しかし本当ですよ。
「光」を詠ず
*青色の イブの光も 知恵が生む 日いづる国の 技術(わざ)を信ぜよ
*漆黒の 闇が懐かし ちかごろは 遠回りする 道も分からず
・・・一首目。この空前の大不況、日本には技術しか頼るべきものがない。青色発光ダイオードも瞬く間に普及してしまったようだ。
二首目は、若い恋人同士は見えてもかまわず「愛」を楽しんでいるか?羨ましい!
いづれにしろ、歌舞伎を楽しみ、こんな妙な歌に興じるのも元気なうち。
(後記) Aさんに歌を作った、それをネットで披露したいと言ったら歌も聞かずに「辞めときなさい。下手な歌を読まされる読者は迷惑!」といわれた。でも皆さんもつくってみませんか。何、どうせみんな素人だ、と思ってずうずうしく。
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