あの「生物と無生物の間」を書いた福岡伸一先生の著書。光文社新書。
雑誌の連載ものをまとめたもののようだ。一見優しい書き方だが、内容は専門的なところが目立つ。正確に伝えられるように、本文を多く引用しながらまとめてみる。
1677年、レーウエンフックは自分の顕微鏡で其の白い液体の中に小さな生物を見つけた。
ピーナッツに尻尾をつけたような生物・・・・精子である。
ネッテイ・ステイーブンスはチャイロコメノゴミムシダマシの精子を観測し続けた。1905年に精子には染色体が9個のものと10個のものがあることを論文で発表した。
人の染色体は22個の対、44個の染色体とXXあるいはXYの2個、合計2種46個よりなる。
Y染色体はX染色体の5分の1程度の大きさ、しかし卑下することはない。この中にはオトコをオトコたらしめる遺伝子が含まれている。1991年、グッドフェローたちはSRYと呼ばれる遺伝子こそが性決定遺伝子だとした。
胎児は受精後7週目までは同じ道を行く。頭が丸くなり手足が伸びお腹、お尻、太ももがはっきりする。太ももの間をのぞく。見た人は、この子は女の子だと思うだろう。
基本仕様のプログラム進行になんらの干渉が働くことがなければ、股間は立派な女性生殖器となる。まず割れ目から細い陥入路が奥へのびる。ミュラー管と呼ばれる。さらに細分化して膣に変化し、子宮、卵管をつくりあげる。
しかしここでSRY遺伝子のスイッチがオンになると・・・・・。テストフロンと呼ばれる男性ホルモンの生産と放出を行う。
ミューラー管は、分化・成長を止め、閉じあわされ、ウオルフ管が分化・成長を始める。
やがてこれが精巣上体、輸精管、精嚢など精子の輸送を行う組織を形成することになる。
下降した精巣は閉じあわされた(左右の大陰唇を縫い合わせて出来た)だぶつきのある袋状の場所まで下がる。こうして陰嚢ができあがる。
これは、少し後の話。精巣で作られた精子は精巣上体に入り、輸精管をへて精子の貯留糟である精嚢に溜められる。射精時に精嚢は0.8秒間隔で強く収縮し、精子は射精管を通じて外へ放出される。つまり射精管はウオルフ管の一番外に近い部分に作られる。
さて、あの割れ目を閉じた結果、精子と尿の放出場所がなくなる。そこでウオルフ管の開口部のごく近い部分に尿路つまり尿道が形成される。
男性諸君、自分の持ち物の形状をよく点検してみよう。棹はたらこの海綿状組織を左右から縫い合わせたようになっている。亀頭は爬虫類の頭部のように上側は丸く底面は平たい。尿道は、その底面の中央をあたかも左右に寄せたような浅い通路を通って開口している。すべてオンナからオトコヘのカスタマイズの明々白々な軌跡である。
アリマキという虫は植物の汁を吸い、余った分を蜜として排出する。
蟻はこの蜜を狙って、アリマキを保護している。
アリマキはすべてがメスである。つまりクローンである。メスのアリマキが勝手に子を宿し、メスの子供を産み、無数に増えてゆく。しかし寒くなると死に絶える恐れがあるからX0型染色体を持つオスを生み出す。オスはもっぱら交尾を繰り返し、卵を残し死んでゆく。翌年卵からかえるアリマキはすべてがメスである。
生物の歴史においてオスはメスが産み出した使い走りでしかない。
メスからメスへ。女系という縦糸だけで、長い間生命はつむがれてきた。
オスは、縦糸と縦糸を橋渡しし情報の変化をもたらす。其の情報伝達のおかげでメスの遺伝子を別のメスへ。それが変遷する環境を行きぬく上で大切であった。オスは使い走り、急造ゆえに不都合や不具合が残った。寿命が短く、様々な病気にかかりやすく、ストレスにも脆弱。
では一見オスこそが、この世を支配しているように見えるのは何か。遺伝子を運び終わった後オスは本来不要。しかしメスは、まだオスに使い道があることに気がついた。巣を作る、卵を守る、資材を運ぶ、食料を調達する・・・・・。メスの代わりをしてメスに自由時間を与える。
ダーウイニズム的に言えば、そのようなオスの役割を採用した種が生存上有利になった。
ヒトの場合も同じである。オンナたちは宥めたり、賺したり、泣いたり、喚いたりした。
オトコたちは、薪や食料、珍しいもの、美しいものを運んできてオンナたちを喜ばせた。
しかしオトコたちは、余分に得られたときはそれをどこかに隠しておけばいいことに気がついた。余剰の発生である。余剰はだんだん蓄積された。余剰は掠奪を生み、蓄積を巡って闘争がおきた。余剰を支配するものが世界を支配する様になるのに時間はかからなかった。
男性諸君、この本、面白いでしょう。文句なく買い求めることをお勧めします。
註 ご意見をお待ちしています。
e-mail agatha@bekkoame.ne.jp
home-page http://www.bekkoame.ne.jp/~agatha