738「漢字検定と日本語のあり方」(2月20日(金)晴れ)

漢検が文部省の立ち入り調査を受けているとのこと。
私は、日ごろ書店にめったやたらに漢検関係の本が並び、試験もいかにも派手に行われている様子を見て、なんとなく商売臭を感じていた。「さもありなん」という思いである。
利益を上げるべきでない法人が多額の利益をあげ、中心の親子は、理事会が専門家ばかりで経理のことは分からぬのをいいことに、協会を私物化した。漢字検定には不要の土地を取得してみたり、自分の墓の横に記念碑を立ててみたり、挙句の果てが其の一部の金が自動車ラリーの参加費にまで使われていたらしいというから、あいた口がふさがらない。
しかしそのような話は置くとして、この協会が日本の漢字の教育に貢献し、今ではTV番組にまでどんどん登場するまでにした功績は認めざるを得ない。

私自身は、このような状況を横目で見ながら依然として趣味として漢字の勉強を続けている。近頃は記憶力がとみに低下している。昨日書いた字が今日は読めない。それだから少々復習しておいても、1ヶ月前にやったテストをもう一度やってみても同じような点になってしまう。それでも60の手習いの宿命、2回目で覚えられないなら、3回目には覚えられるだろう、と考えることにしているのだが・・・・・・。
なぜこんな風に執着するかというと、漢字が基礎となって、それを深めることによって漢字文化の入口に立つことができるように感じる。事実これが縁となって私は中国古典を日本語訳であるが読み始めたし、書というほどではないけれど筆を持ってみる気にもなった。努力と見返りはあっているように感じ、ボケ防止には大変効果的である、と思っている。
最近は、漢検の漢字辞典を読み始めている。文字もさることながら、聞いたこともないような熟語が載っている。人は、常識とは自分の学んだこと、周囲にあるものなどを基準に考える。この本を作った先生方は中国古典を読むことばかりが常識と考えている、と思う。それゆえにもう現代でもう使っているとは思えぬ仏教用語が出てきたり、昔の農作業で使うような語、あるいは聞いたことのない花の名前が出てきたりする。これを都会育ちの受験生に覚えろ、というのか、と思えば腹が立つが、試験を考えずに、こんなことを考えているジジイもいるくらいに聞き流せば、それはそれで興がわく。

ところで21日の日経新聞文化欄に「ネット時代の書き言葉論争」なる記事が載っている。
水村美苗氏の「日本語が滅びるとき」(筑摩書房)がヒットしているという。水村美苗氏といえばあの漱石そっくりの文体で「明暗」の続編を書いた人と思う。
この本はまだ読んでいないから以下の話は記事から抜粋する。
「「教科書から夏目漱石が消えた」という話を聞くと、何が起こっているのだろうと思わざるを得ない。日本語が危機に陥っているのではないか。英語の存在とインターネットの登場によって、読まれるべき言葉が序列付けされようとしている。今後も日本語が真剣に読み書きされるためには、国民の一部を優れたバイリンガルに育てる一方で、日本近代文学を読み継がせることを基本に国語教育に力を入れるべきだ。(編集)」というような内容のようだ。
これに対して賛同する著名人、賛同するが部分的に異なる意見を述べる著名人、「話題を呼ぶのはセンセーショナルなタイトルが理由だろう」と真っ向から否定する人、それぞれに意見が現在交錯しているところだという。反対論者のものをピックアップすると
「今の文学を幼稚だというのはおかしい。英語や日本語の教育でも自分で評価眼を養うボトムアップ型のほうがいいのではないか。」
「伝統芸能のような文学があってもよいが、作家は新しい表現を目指すべきではないか。」
この議論は私に言わせれば、将来日本人はどの程度まで日本人たろうとするのか、という問題につながっているようにも思う。コスモポリタンを志向するのか、それとも日本人はあくまで日本人として世界向き合うのか。もっとぶちあけて言えば、国語教育と英語教育のどちらを重要視すべきか!

漢字検定には、必ず近代文学の名文が出題され、其の中の熟語を読ませたり、あるいは書き取りを行ったりさせる。夏目漱石に、泉鏡花に、徳富蘆花に幸田露伴・・・・・何しろ一級で要求される範囲は「現代のどのような文章であろうと、また近代(明治・大正・昭和戦前まで)すらすら読める」ということなのだから。
私は、個人的にはどちらかといえば国語教育重視派ではあるが、ここまで日常生活では必要ではない、文学はルピが振ってあるからそれで読めればいい、ただそれらを読むことは知的好奇心を満足させるくらいに考える。それゆえ、漢検一級はまったく趣味の世界なのである。

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