日本経済新聞の記事を追いながら事件をまとめてみる。
西松建設からの資金提供を巡って、民主党小沢代表の公設第一秘書が逮捕された。
ところが小沢氏は「何らやましいところはない。」とした上で民主党代表を辞任する考えのないことを強調した。それどころか今回の捜査のあり方について「異常な手法だ。衆院選が取りざたされているこの時期に不公正な国家権力、検察権力の行使という感じをもった。」と強く批判するのである。
政治資金規正法は、2000年から、企業が、政治家個人の政治団体(資金管理団体を含む)へ献金する行為を禁止した。政治家と企業の癒着を防ぐのが狙いで、献金先は政党や政党支部に限定された。しかし小沢氏の資金管理団体「陸山会」が西松建設から直接献金を受けたとしたら違法になる。小沢氏は「政治団体からの寄付という認識だった。」と強調する。
検察は、政治団体は隠れ蓑で、実際は西松建設からの献金と見る。陸山会の政治資金収支報告書に「二つの政治団体から献金を受けた」と計上したのは「虚偽記載」に当たるというのである。すると秘書は事実上、西松建設からの献金だと認識していたかどうかがポイントとなる。
理屈では小沢氏の論も通るようにみえる。しかし秘書は西松建設総務部と頻繁に打ち合わせを行っていたうえ、資金提供を依頼していた、というからどうみても実態は違うように聞こえる。ホリエモン事件のときにもホリエモンは部下がやったことで私は知らぬ、と主張したが、状況証拠や部下たちの証言を集めて知っていた、と断定した。
しかも小沢氏は「西松建設に便宜を供与したことは一切ない」と主張するが、西松建設側は「もともと東北地方が弱かったから強化を狙って献金した。もちろん効果はあった。」と主張しているところを見れば、常識的判断に落ち着くはずだ。しかも個人の名前で寄付させ、寄付した分はボーナスで補填した、などという話まで出ている。
「なぜこの時期に」という気持ちは分からないではない。しかし「不公正な国家権力、検察権力の行使」の行使というような言葉は、小沢氏のような立場にあるべき人が言うべき言葉ではない。第一にこの場合権力を行使させたのは誰か、それは時の政権、つまり自民党ということになりはしないか。それだけのことを言うのであるならしっかりした証拠をそろえた上で発言しなければいけない。第二にこのような捕らえ方であるなら、民主党が政権をとったときにどうなるか、ということである。国家権力を使って反対する勢力を取り締まるのではないか、と懸念される。
今回与党の政治家の一部も西松建設の団体から資金提供を受けたと報道されている。それゆえに捜査は一方的だ、という思いもあるのだろう。しかし今のところ金額的に少なく、しかもパーテイ券の購入などが目的、返してしまおう、との動きもあり、それほど大きな問題にならないように思う。とすればここで見栄を切った小沢代表への献金だけがクローズアップされるのはやむをえないことだろう。
以下は私の独断と偏見。
人間の心のありようはそう変わるものではない、と考えている。小沢氏の検察不信は相当なものらしい。
毎日新聞によれば「自民党田中派と竹下派に所属していた小沢氏は、検察と政治権力の壮絶な格闘劇を間近で見てきた数少ない政治家だ。ロッキード事件(1977)は田中角栄首相の寵愛をうけた若手議員として、リクルート事件(85年)は竹下内閣の官房長官として、東京佐川急便事件(92年)は竹下派会長代行としてその渦中にいた。・・・・金丸信元副総裁が政治資金規正法で摘発された件についても「あの捜査には断固反対した。検察のやり方はおかしい。」と語っている。」その結果が「法務・検察の中枢にいたOBは小沢氏について「古い体質の人ということは分かっている。」と話す。」
それゆえに、法が改正されても、それほどのこととは考えず、献金を受けるスタイルを当然と考えていたのではないか。
ところで麻生政権の支持率が、ぐんぐん下がっている。しかし不思議なことに民主党支持率や小沢代表への期待が余り膨らんでいない。国民に「麻生さんでは問題だが、さりとて小沢民主党では・・・・」との思いが強い。民主党が小沢氏を担ぐのは、其のマキャベリズム的思考が選挙に有利だからだ。しかし国民はそんな魂胆を見抜いている。選挙協力を得たいばかりに共産党、社民党に妥協しようとする傾向が見られることも不信を増幅させる。
今、民主党に期待するものは、景気を立て直す、政治とカネの関係を断ち切る、など純粋なものではないか。とすればいたずらに早い政権の移譲を求めるのではなく、原点に立ち返った政策提言や国会での論戦展開を行う必要がある。
註 ご意見をお待ちしています。
e-mail agatha@bekkoame.ne.jp
home-page http://www.bekkoame.ne.jp/~agatha