746「高級ホテルのバイキング」(3月15日(日)晴れ)

「お姉ちゃんと15日に恵比寿のウエステイングハウスにバイキングに行くのだけれど一緒に行かない?**ちゃん(孫娘)もくるわ。」
こんな猫なで声の電話は要注意である。娘がもう引退している私を珍しく誘ってくれる。しかし目的は、当然こちらのお財布である。しかも自分たちの魅力がやや衰えて、孫娘の魅力が大きくなっていることを見抜いている。言われた方は考える。ウエステイングホテルといえばなかなかの高級ホテル、昔は帝国ホテル、ニューオータニだったが、今ではフォーシーズン、ハイヤットパーク、お台場にある何やらホテルと並んで東京の4大高級ホテルとも聞いた。どんなにとられることやら・・・・。
詳細を聞いてみると、このバイキングを一番楽しみにしているのは孫娘らしい。なぜならお菓子のバイキングが主体だからだそうだ。特にチョコレートの噴水があり、チーズフォンジュみたいに具材をつけながら食べる、それが楽しみとか。実は昨年まで、姉妹と孫娘三人で毎年行っていた。しかし今年は働いていた次女が、出産で仕事をやめたため、収入が無い、従っておじいちゃん、肩代わりしてということのようだ。こちらとしては、お値段もそれほどでないと聞いてひとまず一安心。

恵比寿も随分変わってしまったものだ。日曜日、陽気もよいとあってガーデンパレス口はかなりの人出。昔では考えられない。それに自由が丘だの成城だのが近いのか、駅ビルそのものにさえかなりな高級店が店を出している。
「亭主はどうした。」「チャーハンを用意してきたわ。赤ちゃんの面倒を見ている。この前までおとなしかったのに最近はぎゃあぎゃあ泣くなら大変。でも男の人もそういうのに慣れたいいのよ。」と次女は勝手な理論を振りまわす。彼女は始めての男の子を昨年秋に産んだばかりだ。「おくさんがこんなおいしいもの食べるのにチャーハンでいいのかい?」と聞くと「あら、いけなかったかしら。」・・・・私は泣き止まぬ孫を脇に冷えたチャーハンを食う亭主殿の表情を思い浮かべた。
孫娘は今中学1年。最近めっきり落ち着きが出てきた。身長はもう二人の娘を追い越さんばかりだ。最も精神は子供?「最近はどうしている?」「ねえ、お母さんを何とかしてよ。今日もここにくるときお勉強、お勉強ってうるさいんだよ。お勉強、嫌い!」

ここのバイキングはなかなかの人気なのだそうである。予約をしなければ入れないとか。うやうやしいボーイの向こうの会場はもうかなりの人がごった返している。
しかし私は、のっけから気に入らない。次女は予約のときに赤ん坊もつれて来る、と言ったらしい。ホテルは4人用のテーブルと二人用のテーブルをくっつけて用意した。赤ん坊は来ない、と知ると、彼らは二つを離して4人用のテーブルのみにしてしまった。しかもテーブルは長椅子と壁に挟まれたコーナー、「隅に入れないじゃないか。」というと「順番で入っていただきます。」としゃあしゃあという。その隅っこに入ったから気に入らない。
取ってきたものを見てびっくり。私は最初から主食、つまり肉料理を取ってきた。娘二人は前菜中心。ところが孫娘はお菓子ばっかり。あのチョコレートファウンテンでチョコレートをたっぷりつけた果物やマシマロも二つ三つ。
狭いテーブルに沢山のプレートはなかなかに置けぬ。やっと並べても持ち上げるわけには行かぬ。仕方ないから口の方をそちらに持ってゆく。まるで鳥がついばむ風情だ。料理というのは半分雰囲気で決まる。高級ホテルなら、ゆったりとしたテーブルにでんと構えて食いたいものだ、と不満。味は値段がかなり高いだけ、あって悪くはない。

しかしメニューがまた気に入らない。西洋風を決め込み、ご飯がないのはいいとして、パンはあてがいぶちの黒パンのみ。海外のホテルの朝食などで何種類ものパンが出て楽しんだ経験を持つ私としては不満。ソーセージやハムに種類がないのは、洋食料理が素晴らしいから許せるとしても、飲み物が充実していない。コーヒーは持ってきてくれるが、お世辞にもうまいとはいえぬ。ジュースも紅茶もミルクもない。おまけに孫娘がウーロン茶をとったらこれは別料金だった!
むかし東北の温泉の巨大ホテルで宴会をした。最後に飯だけが出てくる。おかずがないから漬物か何かないのか、と聞いたら、仲居はきょとんとした顔で「お金がかかります。」といった。客への対応がまったく出来ていない、といやになった。このホテルもそんな感じで、ホテルにとっては、我々などジャンク客なのかもしれぬ、とぶつぶつ。

とはいえ娘二人と孫は大変満足だったようだ。「おなかをすかしてこなきゃだめよ。」と言っていた彼らは、「もう入らぬ」と今度はウエストを心配していた。結構良い値のお勘定。これだけだすなら、普通の落ち着いたフレンチレストランがいい、と感じたのは、私が歳をとったからか。

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