764「天使と悪魔」(5月18日(月)曇り)

あの「ダ・ヴィンチ・コード」のダンブラウンが書いた「天使と悪魔」が映画化され、なかなかの人気とか。作品を読んだガーツフレンドのAさんのナイト役で鑑賞。
監督は「ダ・ヴィンチ・コード」と同じロン・ハワード、「シンデレラマン」や「コクーン」の監督もした。主演はもちろん?トム・ハンクス。お相手の女優はイスラエル出身のアイエレット・ゾラー。典型的なハリウッド映画。良くも悪くも早い歯切れのいい展開。

ハーバード大学図象学者ラングドンをローマ教会からの使者が訪問。
実はスイス・ジュネーブの科学研究所(欧州原子核研究機構)で、反物質の研究が行なわれている。反物質とは、質量とスピンが同じで電荷などがまったく逆の反粒子によって構成される物質。通常の粒子群とぶつかれば巨大なエネルギーを放出して消滅する。その専門の研究員が殺され、全裸死体の胸には「イルミナテイ」の紋章の焼印。17世紀、ガリレオなど科学を宗教よりも信奉する一派は弾圧されて、地下にもぐり秘密結社「イルミナテイ」を作った。既にこの世に存在しないはずであったが生き返ったのか!
ローマでは、おりしも教皇がなくなり、新しい教皇を選ぶコンクラーベという会議が開かれようとしていた。ところが次期教皇候補4人がそろって失踪してしまった。そしてイルミナテイを名乗る人物から、かって科学者を迫害した教会に復讐するため、教皇候補を1時間に一人づつ殺して死体をさらし、最後には反物質を大爆発させる、との脅迫。反物質はどこにあるのか、死体をさらす4つの場所とはどこか。
ローマに到着したラングトン教授は、殺された研究員の娘等とともに知力や体力の限りを尽くして戦う。しかしサンタ・マリア・デル・ポポロ教会では地に、サン・ピエトロ広場では風に、サンタマリア・デラ・ヴィットリア教会では火の中に、次々に死体がさらされてゆく。教授は、次の犯行場所を解き明かし、金で雇われた実行犯をナヴォーナ広場に追い詰めるが、一瞬逃げられてしまう。しかし・・・・。

推理小説としてみれば、見立て殺人が読者をミスリードさせ、最後にはごく現実的な問題が犯行の動機、というのはよくあるパターン。
ただ推理小説を映画に仕立てることはなかなか難しいのだと思う。小説ならパズルの面白さも登場人物の苦悩も怒りも喜びも書きたいだけ書ける。しかし映画は時間が決まっており、しかも多くは視覚で伝えなければならない。原作に多くの謎解きがあるとそれだけでいっぱいになり、他のものを語れなくなるのではないか、と思う。この小説を私は読んでいないから知らない。しかし後でAさんに聞いたところ「実はローマ教皇がある女性と愛し合った。しかし結婚、性交は、戒律で禁じられているから、人工授精で子を作った。この子がローマ教会で枢要な地位を占め・・・・」などという話があるらしい。ところがそれらはすべて省略。スリル、サスペンスの活劇仕立てになっている。もっともその分、娯楽映画として面白いのだが・・・・・。

何年か前に、私はローマに滞在して観光したことがある。その経験があるから殺人現場等に使われている場所が懐かしかった。以下思い出しながら・・・・・。
調査発端のパンテオンは、ローマ時代の神殿。半球形のドームの頂上にオクルスと呼ばれる開口部がある。ラファエロの墓もここあった。
サンタマリア・デラ・ヴィットリア教会は、中に「聖女テレサの法悦」という彫像があるそうだ。ホテルの近くにあり、朝早く行ったが、入れなかったことを覚えている。
サンタ・マリア・デル・ポポロ教会は、スペイン広場の向こう、ボルゲーゼ公園の麓、ポポロ広場に面している。建立は1099年だが、中にラファエロの設計になる礼拝堂がある。
さらに映画の舞台となるサンタンジェロ城は、ハドリアヌス帝が霊廟として建設したところ。一番上に剣を鞘に収める大天使ミカエル、この城が地下道でバチカンとつながっていると聞いていたが、映画ではそれが使われている。私にとっては初めてローマに行ったとき、ジプシーに襲われたところ。
ナヴォーナ広場は、ローマ時代の競技場の跡地。真ん中に4つの大河を擬人化した噴水、バロック時代ベルニーニの作だ。犯人が、この噴水に教皇候補の一人を放り込むという趣向。広場に面するレストランで食事をしたのを覚えている。

また最後に、牧師が反物質の閉じ込められた容器をだいたまま、ヘリコプターで上空高く脱出する。そして雲の中で大爆発。爆風でサン・ピエトロ広場に集まった人々が吹き飛ばされるシーンは、まさにシステイーナ礼拝堂のミケランジェロの天井絵、「最後の審判」をイメージしている。さらに犯人が、最後に自身を火あぶりにして自殺し、白い煙となって、それが人々にコンクラーベの終了を告げるところも面白い。硬く考えずに「映画は楽しむもの」と割り切って見ることをお勧めする。(462「ダ・ヴィンチ・コード」参照)

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