湯煙の中で男は熱弁をふるった。
「西川さんはやめませんよ。だって、後任がいないもの。いろいろあって送り込んだ西川氏があんなひどい目にあっている、次を送るわけがないでしょう。一方で官僚をすえようとすれば、あれだけ日銀総裁問題でごねた民主党、いまさらそんなことは出来ない。政府が無理にやめさせようとすれば株主として臨時株主総会を開かせ、そこで社長解任を突きつけることだけれど、いくらなんでも世間の目もありできないでしょう。」
余り男が熱心に言うものだから、頭の中に焼きついた。その通りに行くだろうか。
その後の経過とあわせて自分なりに考えてみる。もとより情報の制約された個人の考えである。誤解や間違っているところはお許しいただきたい。
結局は郵政の西川氏は辞任した。彼は彼なりに努力したと思う。簡保の宿をあせってたたき売りしたことは問題であるにしても、あんな不採算なものから早く足を洗わなければいけない、と考えた点では正しいのだと思う。しかし個人的の立場が絡まっていると思う。人間は周りの意見とわが身の立場に動かされるものである。周りは「辞めろ!」の大合唱、個人の努力が報われぬ、何のために苦労するのか、そう考えて不思議ではない。
自民党の鳩山大臣は西川氏に「辞めてもらいたい。」と常々言っていった。
しかしあれは何百億円かけたか知れぬ簡保施設を1万円かそこらで売ったからである。そんなに焦って売らなくてもいいじゃないか、と調べたところ、販売先決定におかしなところも出てきた。郵政の株はまだ国が持っている。国民にそんな損害を与えていいのか、といういわば正義感から出たように思う。一つ注目しなければならないのは、だからといって彼は、郵政民営化を元に戻せ、といったわけではない。
マニフェストというものを、各党とも選挙のおり発表するようになった。国民新党のそれを見たときに私はびっくりしたのを覚えている。郵政民営化反対以外ほとんど書いていないのである。この党が政権をとったらその他のことはどうするのだろうと思った。
選挙の結果、民主党が大勝し、自民党が負けた。ゆえに国民は民主党の政策を正しいと考えたのだろう。しかし国民新党も社民党も躍進したわけではない、つまり国民の支持を受けてはいない。民主党の公約の中で「地域社会で金融サービスを受けられなくなる不安がある、分社化した4社の将来的な経営の見直しが不透明」などとしている。しかしそこにあるのは検討をした上で改革を進めるというものだ。短兵急に西川氏の首を切る、とはとても読めない。そちらは国民新党の考えだ。せめて民主党政権の政策とするなら、西川氏との十分な話し合いや世論のアンケート調査くらい必要だと思う。亀井氏は、民主党のマニフェストにかこつけて民主主義のルールを無視した蛮勇を奮った、と写る。
結局、西川氏の後に、財務省OBをすえてきた。同時に多くの民間役員に退任を願い、その後にまたしても大蔵省OBなどをすえるという。これでは役人の手に郵政を取り戻すこと、自分たちの牙城を確保しようとすること以外の何者でもないでないか。斉藤氏、73歳、官僚だって有能な人は活用するべきだ、という議論は、一見正論に見えるけれども、それではあの日銀総裁選びのときに自民党が推薦した人物はみな能無しだった、とでも言いたいのか。
これはなんと言ったって民主党の一番大きな柱である官僚政治からの脱却に反する。そういえば民主党は、この政策を旗印に掲げたけれども、国民新党はそんなことは言っていなかったように思う。官僚政治こそ一番いいやり方だ、と思っているのではないか。民主党が国民新党のやり方をなんとなく認めているのは、これくらい認めても自分たちにそんなに火の粉がかかるまい、と考えているのではないか。
真の民主主義とはいったい何なんだろう。鳩山首相の言う「友愛の政治」・・・・それどころか私などは「国民ツンボ桟敷の政治」を感じるばかりである。
最後にあのとき男はこうも言っていた。
「やっぱり、利権であるとか天下り先であるとか郵政の利権の魅力は大きいですからね。それを取り返そうとする有象無象は沢山いますよ。」
「参議院で過半数がとれないから民主党は国民新党と社民党にへりくだっているだけ。これが参院選で勝ち単独過半数になったら手のひらを返すように態度を変えますよ。」どのようなことになるのか、庶民はカヤの外から様子を窺ううのみ。
追記:郵政を官僚の支配下においておきたいのは国債の販売先確保のためだ、という議論を聞いた。もしそうだとすれば、日本も情けないことになりつつある。
註 ご意見をお待ちしています。
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これに関連し、読者からつぎのようなメールをいただいております。
郵政の社長人事は「わたり」でやるし、民間の現在の取締役をパージして「わたり」人事をする。その言い訳か9人だった取締役を18人に増員して民間人も取り込むようだ。
組織も簡素化ではなく複雑化して、天下りを公認するのも不思議だ。
一方では膨張する支出をまかなうため、税制を改め控除など廃止する方向の様子。思想は大人を養わず、子供を増やせということみたいだ。
この思想自体は悪くは無いが、どうも行き当たりばったりのような気がする。
ダム、基地問題も行き詰まり感がでている。こんなことで果たして日本国の舵取りはできるのかと心配になる。
でもその民主党を参院補選では国民が支持したのだから、小生のような
心配は少数派なのだろう。
衆愚政治という言葉が頭をよぎるのは小生だけだろうか。