821「奥さんを亡くされたAさんへ」(11月26日(木)晴れ)

そろそろ喪中欠礼の葉書が届きだした。
これが来始めると、こちらは年賀状のデザインをそろそろ考えねばならぬ。
会社で一緒だったAさんから奥さんが68歳で永眠された、との葉書が来た。
型どおりの文章の欄外に、ペン書きでこんな風に書いてあった。
「生命が消えるのは必定とはいえ、早逝は悲しいこと!考え方のアドバイスを頼みます。」
もしかしたら私より年長かもしれぬAさんにアドバイスなどおこがましいが、妻をなくした点では先輩の私としていうべきお悔やみがないか、と考えた。

「喪中欠礼のお葉書をいただきました。奥様をなくされた由、お悔やみ申し上げます。
大抵の夫婦は、亭主が先に亡くなってしまうのに、残されてしまうのは、寂しいものですね。お葉書に「考え方のアドバイスを頼みます。」とありました。先輩にアドバイスはおこがましいのですが、私の経験を書いてみたいと思います。
私は56歳のときに、妻を亡くしました。妻は54歳、膠原病と長く戦った末でした。
人間は、生きるときも死ぬときも結局一人、と考えています。多くの問題に一人で悩み、一人で解決していかなければならないのだと思います。そのひとりぼっちに、少しでも(一部でも)一緒に向き合ってくれる人が、長年連れ添った伴侶なのだと思います。
子達は、いろいろ同情してくれるし、最後は面倒を見てくれるかもしれません。しかしそれは「それが義務、そうするのが人の道。」と考えてするのだと思います。もちろん親は既に他界している・・・・・。それゆえに伴侶を失ったショックは計り知れない。

私は、妻が亡くなったとき、長女に初孫が出来た直後で、次女と息子がまだ独り者でした。父親も健在でした。私がこの状況から元気になることが出来たのは、次女がいろいろ家のことをやってくれたこと、それにガールフレンドが出来たことでした。彼女は中学校時代の幼友達でごく近くに住んでおります。やがて次女と長男は、結婚して家を出て行き、父は他界しました。愛犬まで死に、今では文字通り一人きり、そんな生活が10年近く続いています。
そんな中で、目的感の喪失のようなものに悩むときが時々あります。
面倒くさいなあ、また一日頑張らねばならないのか。自分が今死ぬと、子達は、当座は悲しむ様子を見せるだろうが、すぐに忘れて私の埋葬と、残したものの処分に頭を悩ますくらいだろう。何の影響があろうか。突然死ぬと物理的にはどうなるだろう。死体は果たして簡単に見つけてもらえるだろうか。いや、いや、そんなことはどうでもいい。もう向こうの世界で意識はないのだから・・・・。そんなことを考えることがあるのです。
それでも人間は、生きる努力をしなければならない、元気でいられるうちが花、もっと積極的に楽しまなければいけない、と最近は感じるようになりました。

新GNPなる言葉をモットーにしています。元気、長生き、ポックリ。それが世のため、子のため、自分のため。二番目の「子のため。」と言うのは、子達は、本当は親の世話など面倒だ、元気でいればいい、と願っていることを念頭においているのです。
しかしこのモットーを守るのは難しい。先日も仲間内でこの話をしたところ「そうはいっても痴呆症も、ガンも、よいよいも、交通事故もみんな可能性がある。中々難しい。」
難しくても、それにむけて努力は出来るのだと思うのです。私はくよくよせず、出歩き、適度に運動をして体を鍛えるようにしています。

また人と接することによって脳が鍛えられるそうで、1日4人、普段は会わぬ人と話をするのがいいそうです。4人は無理でもできるだけ心がけています。こういった機会は、自分で作り出すものと思います。私の場合、ラジオ体操を定年以来続けています。お送りさせていただいている阿笠通信も同じで定年を機会に始めました。ほかにスポーツクラブ、高等学校の同期の人たちが主催するいくつかの会に出席、もちろん先述のガールフレンドとの対応等々。最近はお習字なども始めました。それらに加えて、たとえば忘年会なども自分から仕掛けてやるようにしています。料理も、ガールフレンドとよく食事をしますが、メインは私が作ることが多い。あれはボケ防止には結構役立ちます。

私と同様に、奥さんをなくした同年齢の人たちも、それなりに頑張っているようです。東名高速で交通事故にあった同期の男は、一時は悲しみのどん底に沈んでいました。しかし最近は、洋画に夢中、京都によく舞妓さんの絵を描きに行き、毎年1回鎌倉で個展を開いています。また別の男は、地球を歩くことが好きで、いまアメリカを自転車で縦断中とか・・・・・。
それぞれ、前向きな行き方を探しているのですね。悲しい気持ちは十分に理解できますけれども、是非元気を出して頑張ってきださい。また機会があったら一杯やりませんか。グチをつつきあうもいいもんですよ。」

(後記)(12月17日)Aさんと四谷クラブで飲む。案外お元気なようで安心した。「阿笠さんのようによい人でもいたら・・・・。」というようなことまで言い出すから、「それは無理。私の彼女より素晴らしい人なんてまずいない。それより練炭と睡眠導入剤には気をつけたほうがいいですよ。」と逆襲した。

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