823「偽善エネルギー」(12月19(土)曇り)

コペンハーゲンのCOP15が、やっと共同宣言にはなったものの、纏まらなかった状態で終わってしまった様子だ。特に発展途上国が、国益を考えて自分たちに義務が課せられるのはいやだ、と猛烈に反対したためらしい。しかしこの背景には、大きな声にはならぬが「本当に二酸化炭素の排出が地球温暖化の原因なのか。太陽の黒点運動化何かのためではないのか。政治的に利用されているだけではないか」との疑念があるように見える。
国家も大衆もマスコミも、煽り立てれば真実を余り深く見ることなく、他人の意見に迎合してゆく。我々は、ものを考えるときに真実はどこにあるのか、ということを常に念頭に置かなければならない。エネルギー問題もしかりだ。著者武田邦彦氏は、通信671で紹介した「偽善エコロジー」(幻冬社)で、エコロジー運動として取り上げられているものの真実を語ろうと試みた。

日本の電力のうち、石油を燃料とする発電所の比率はどのくらいであろうか。実はわずかに11%なのである。残りは原子力27%、液化天然ガス23%、石炭27%、水力9%などである。これは石油の値段が上がって、徐々に石炭に切り替えたおかげなのである。極端に言えば日本は、もはや「石油を電気の生産には使っていない。」時代に入っているのだ。
そんな中でたとえば太陽光の電力利用が喧伝されている。しかし太陽エネルギーは、分散して降り注がれるから、多くを集めようとすれば膨大な土地がいる。そのため著者は「太陽の光は国土面積に比例し、一人当たりの太陽エネルギーは人口密度で決まる」「日本の人口密度がアメリカの10倍以上であり、もしすべてのエネルギー源を太陽光を利用するようになったら、10倍の不利を被る」などとしている。

以下私自身の考えだが、日本では太陽光発電に補助金をだし、しかも既存のお客の電力料金を押し上げてまで薦められようとしている。しかし少なくとも石油の節約と結びつける議論は誤っているし、特に集合住宅の多い都会では太陽光など利用しようにもできない。人口密度が高すぎるゆえである。設置コストもかかるし、その割に回収される電力量も少ない、太陽熱をお風呂のお湯を温めることに利用する方がずっと効率的だ、と思うのである。この妙な政策にどのような政治的な力が働くのであろうか。
太陽光と並んでマスコミには水力、風力、バイオ、自然エネルギーが大きく取り上げられている。しかしこれらは以下の引用で分かるとおり、日本のエネルギー需要あるいは電力需要の規模から見れば、非常に小さなものである。
「太陽の光が変換したエネルギーとして、水力、風力がある。電気の数%はまかなえるが、大きく頼ると自然を破壊する。」
「「バイオ・・・」というのは、太陽の光が植物の中にたまったもので、現在の日本のエネルギーから、せいぜい100分の1しか利用できない。」
「地熱発電、潮力発電などは魅力的だが、まだ技術的に難しいところがあり、新しい発明を待っている状態である。」(98P)

ただそうした中で石油がなくなってゆく、という事実は覆いようもない。1966年以降巨大油田が見つからなくなり、石油が無くなるのではとの噂が流れ、高騰した。その後各国が様々な手を打ち、価格はかなり安定してきている。石油の埋蔵量は各国からの報告に基づくが、政治的思惑が働き、はっきりしない。それにタールサンドなど、利用に値段がかかるものもある。それゆえはっきりしないが、近い将来、石油の不足が起こり、値段が10倍くらいに成ることは確実と予想される。
そこで原子力に頼らざるを得ない、と著者は考える。原子力発電所があれば原子爆弾は作れる。しかし石油がなくなれば各国が原発を持つようになり、それはとめようもない。それゆえ原子力が平和になるか「危険」になるかは、人間の責任にかかっている。
原子力発電所は「チェルノブイリなど欠陥原発は無視していい。」日本も軽水炉を使っている限り、安全性は完璧といえる。スリーマイル島の事故は、いい加減に運転したことから起こったものだ。またこの事件は「あのようにひどいことが起こっても、環境にはまったく影響がない。」と読むべきだ。ただ地震については、柏崎のように400ガル対応で作ってもトラブルを起こすことがない、とはいえない。そこは科学の判断領域を超えている、としている。

結論に「ヨーロッパの各国が、必ずしも主体的に自然エネルギーを利用しているわけではない。」とし、日本も含め各国とも国状に合わせたエネルギー利用を進めるべきとする。
またこの問題に対するNHKをはじめとするマスコミの無責任さに言及している。それにのせて、「省エネルギー」の旗の下に、新しい製品を国民に無理やり買わせようとするエコポイント運動に疑問を呈している。

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