825「ゴミを作る社会」(12月30日(水)晴れ)

どこかで一夜飾りはいけない、と言われた。各部屋の掃除等は大体終わっている。障子も一箇所だけ張り替えた。床の間に生協で購入した鏡餅をセットし、玄関飾りをつけ、花も生けた。カレンダーも新しいものに取り替えた。門の松飾は省略。最後にいくつか切れていた外灯等の電球を替えた。これでほぼ新年を迎えられそう。

TVで片づけられない人たちの放送をしていた。片づけられず、家の中がゴミで一杯になり、外まではみ出し、近隣に迷惑をかける。しかしゴミもまた私有財産であるから行政当局がおいそれと動くわけに行かぬ。それにその撤去に要する費用は誰が払うのか。
そういう人の傾向をつかみとろうと、TV局がどうしてゴミ屋敷にしてしまったのか、聞いて回っていた。あらゆる職業に及ぶ、性別を問わない、年齢を問わない・・・・・。唯一言えることは全部一人暮らしの人たちのようだ。
あるものは妻を亡くし、あるものは兄弟をなくし、一人になってしまった。部屋をきれいにすると言うのは、多少なりとも人の目を意識するからである。それがなくなり、生きがいもなくなってくると面倒くさくなる。すると食ったもの、買ったものをそのままに積み上げることが始まる。それがだんだん高じてゆくのである。

最近は、もっとうるさいのかもしれないけれど、私は今までに家賃滞納者を二度追い出したことがある。そのうちの一人の男は、東中野でアパート斡旋業をやっていた。年齢は40すぎだったのだろうか。小さな小さなアパート斡旋業。その辺でも特段にぼろいビルの2階。あれでは客が来るわけはない、と私は感じた。景気のよいときもあったが、そのうちにいけなくなった。何ヶ月もため、督促してもなかなか応じてもらえない。
とうとう会社までつきとめて電話するが払います、払います、といいながら応じない。部屋の鍵を変え、立ち入り禁止にし、通告期限まで待って部屋に入った。

中はゴミの山であった。特に新聞を捨てないで山積みしている。漫画などの雑誌を山にしている。カップラーメンの食い指しなど食料品の廃棄物も多い。2Kで二つの部屋と台所がゴミで埋め尽くされ、一方の部屋の中央に畳み一畳分くらいのくぼみ。そこで寝るらしい。
冷蔵庫を開ける。ものすごい臭気。何ヶ月も使っていないのか、食品が腐ってアンモニア臭を発散させているのだ。人に頼めば大金がかかるだろうし、面倒くさいと私自身で掃除し始めた。燃えるゴミ収集の日には、ゴミ置き場にビニール袋が30くらい並んだ。しかし特段文句を言われることもなかった。
片づけるうちに押入れの奥から新品のシーツや靴下、ネクタイなど次々出てきた。何もあんなに汚い蒲団に寝なくてもいいのに、と思った。ノートが出てきた。東北の出で司法書士の資格試験をとろうと志したことがあったらしい。努力の痕跡が見つかったが、それも挫折したようだ。男は、最近はこの部屋に帰っていない様子だ。部屋を一度汚くしてしまうと、部屋に対する愛情がなくなってしまうのだろう。きっと男はあの東中野の自分の会社で寝泊りしていたに違いない。
最後に残った冷蔵庫等は、出入りの大工に助けてもらってかたづけ、結局引き取ってもらった。あんな汚いところの作業で、怪我も呼吸器を悪くすることなかったのは、若かったからかも知れぬ。
よく覚えていないけれど綺麗にするのに半月くらい、それからいたんだところを修理してまた貸すのに1ヶ月くらいかかった。追い出した男が何か言ってくるか、と心配したが、何も言ってこなかった。1年位して東中野を訪問すると、もうあのボロビルは取り壊されていた。アパートのその一室には今は学生が住んでいる。

ところでTVの放送で、メーカーはとにかくものを売りたい。後のゴミのことは考えない、と言っていた。そう、大抵のものは結局ゴミになる。現代社会はゴミを作るために消費を煽っているような側面も否定できない。困ったこと・・・・しかしメーカーの責任と言うわけにも行かず・・・・。

TVで元公務員の某氏は、年齢により、もう動けなくなった。そのために積み上げざるを得ないようなことを言っていた。ゴミをビニール袋に入れ、近くのゴミ置き場にもって行くのだって大変なのかもしれない。部屋を片づけるということ、いや、それより現代に生きてゆくこと自体が、ひどくエネルギーと体力の要ることなのかもしれない。郵便受けに次々とくる書類、税務署なんか、国民はだれでも通知を読んで、それなりの行動をとれるとでも考えているのだろうか。また電球の交換など、どうやるのだろう。そういえば体力のなくなった年寄りのいる家は、すぐ分かる。草と木が伸び放題・・・・。

今年はセーフ、でもいつまで今年のように、私は、こぎれいにして新年を迎えることが出来るだろうか。

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