831「頭のいい子の育て方」(1月18日(月))晴れ)

TVで「頭のいい子を育て方」というような番組をやっていた。
学者によると、子供の能力は6歳までに大体決まってしまうらしい。その頃には大人の脳のほぼ90%が出来上がり、固定化してしまうからだ、といっている。
面白いもので、できる子はリビングで勉強していたものが多い。統計の取り方が分からぬが、子供部屋を持つよりよさそうに見える。カクテル効果といい、子供は周りの雰囲気で勉強するようになるのだ。
学生たちに聞いて回ると、子供の余技にやっていたものは、水泳が多いのだそうだ。水泳は自分の努力が素直に結果になり、なかなか自己発展に役立つ。
ほめることが大切とも言っていた。子供の特質はほめられたい、ことである。ほめられればまたほめられたい、と子供なりに考えて工夫する。それが進歩を生むのだ。
現役東大生の子供時代を聞き、親の家まで訪問して聞いている。
一人は自衛官の子供であった。お父さんが教育熱心。女の子だが、足腰が強くなければいけないと生まれてまもなくから足を動かしてやるなどの運動をさせた。その結果10ヶ月くらいで歩けるようになった。歩けるといろいろなものに近づくことが出来る。世界が広がり脳が刺激されるという。
もう一人は母子家庭であった。母と二人だけの生活。「たまごっち」が買えなくて手作りで「たまごっちもどき」を作って遊んだ。何であれ、物を作るということは創造力を養う。

どこまでの頭かは別にして、自分自身の子供時代を振り返る。6歳といえば昭和22年、まだ私は、母、生まれて間もない弟と信州の山奥に疎開していた。父は東京で働いていた。
母に大事にされたが、おもちゃなど無い時代、子供なりに遊びを考えねばならなかった。
お兄さんたちが蝉を捕まえるのが羨ましくて、追いかけてゆくと「お前は蝉をどうするのだ。」
食う、と答えたらしい。また大いにからかわれた。
桑の実がうまいとどこかで習った。桑畑にある桑の実を採ろうとして蜂に刺された。わんわん泣いて帰った。母親は「蜂に指された後はアンモニアがいい。オシッコにはアンモニアが含まれている。この子、出さないかしら。」と抱いている弟をゆすったら、今度は弟が泣き出した。
そんな日の連続であった。
母はいつも味方であった。いつもかばってくれた。近所に自慢してくれた。初めて買ってくれたノートと鉛筆の嬉しさを覚えている。何か書きたいのだが、書くことが無い、そのもどかしさを記憶している。6歳のとき、昭和22年に東京に出てきて父も含めた一家4人での生活が始まった。父も教育熱心であった。まだ教科書が、くじ引きで当たったものしかもらえぬ時期であった。父は先生から借りて一晩でそれを写し、私に持たせてくれた
小学校2年の時に、絵日記をつけさせられた。1年続いた。これは後から考えるといい勉強になった。父は私の絵日記に綺麗な表紙を描いてくれ、とてもうれしかった。もちろん勉強部屋などあるわけも無かった。しかしそれで十分、私はそれなりにうまく育つことが出来た。
振り返ると、貧しい中で父と母が、存分に愛情を注いで存分に注いでくれたことに感謝する。おかげで一応やりたいことが出来、それなりに自分の才能の伸ばすことが出来た。

私は、今68歳、父ほど熱心ではなかったが、子たち3人はそれなりに育ち、みなそれぞれに家庭を持って独立している。そして孫5人、離れて住んでいることもあり、孫の教育はすべて両親で、それを私は脇で眺めている。
女の子が一人の家庭は、非常に教育熱心。親はこの子は将来東大に行かせるのだと、塾に通わせ、ピアノや水泳を勉強させた。優秀な子に育ち可愛くなったが、「お勉強は嫌い!」と時に言うのが気にかかる。女の子二人と男の子一人の家庭は、逆に自由放任主義。今タイに赴任しており、一家もそちらでの生活をエンジョイしているようだが、日本に帰ったときうまく周囲になじんでゆけるかどうかが気がかり。

それぞれの家庭にそれぞれの教育の流儀があっていい。ただ一人ひとりの子に十分な愛情が必要であり、ほめてやらなければいけないことは言を待たぬ。年上だから我慢しなさい、という親がいるけれども余り感心しない。年齢がかなり離れていればいいが、近い場合には子達は親の愛情をとろうと争っている。
何か疑問をぶつけてきたら出来るだけその場できちんと答えてあげなければ成らない。答えないとそのままになって両者は忘れてしまう。得意な分野が垣間見られれば、そこを延ばしてやらねばなるまい。小さいときは子供部屋なんてやはり要らない。
いろいろあるが子供の教育は人生そのもの、後戻りがきかない。それゆえに、精一杯に、しかし諸般を考慮しながら良く考えて行なう必要がある。

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