847「オオトロを握って!」(3月16日(火) 晴れ)

地中海を含む大西洋のクロマグロの国際取引禁止を協議するワシントン条約の第15回締結国会議が、カタールのドーハで13日開幕した。結果はどうやら日本政府の努力にもかかわらず成立の雰囲気、将来は握りの値段も上がるだろう、と懸念されている。
マグロはスズキ目サバ科マグロ属に分類される魚の総称である。クロマグロのほかメバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロなどがある。クロマグロはさらに太平洋で取れるクロマグロ、インド洋で取れるミナミマグロ、問題になっている大西洋クロマグロに分けられる。最大種で一番うまいのだという。

実を言うと私は嫌いではないが、寿司といえばマグロと決め付けるほど好きではない。いつも鯛、ハマチ、海老、沢山の種類があり、マグロが一番うまい、と誰が決めた、と憎まれ口の一つも叩きたくなる口。
しかも最近では半分くらいは養殖ものという。もっとも養殖には2種類あって、マグロの子供を取ってきて育てるものと、卵から育てるものがある。後者はまだあまり市場には出回っていないらしい。
私の行く回転寿司などでは大西洋のクロマグロのような高級なマグロのトロは出ないらしい。大抵は養殖もの。この前特別サービスのトロのにぎりを注文した。脂はのっているようだが、どうも普通のマグロと味が違う。考えてみたらトロとは書いてあるがマグロのトロとは書いてなかった。どこかでアンコウか何かの種類でマグロの似た味の魚がいると聞いたことがある。その種類も多いのではないか。そんな現状なら「高級なトロの値段が上がったっていいじゃないか。寿司が食えなくなるわけでもない。」くらいに考えている。
この問題について余り深い知識がないから詳しいことは言えぬ。
しかしそんなに日本でトロが食べられる、食べられない、あるいは遠洋漁業の漁師の生活だけで考えるべき問題でないような気がする。

大西洋クロマグロは「ICCATの科学者会議で、地中海クロマグロが未利用状態だった時の推定資源量と比べ、15%以下にまで減少している可能性が高いと推定されている。」とのこと。
もってまわった言い方だが、これをベースに、モナコは、資源が今後回復に転じる傾向が確認され、また、持続可能な資源利用の体制が確立されるまでは、国際取引の一時中止も止むを得ないとし、ワシントン条約の決める絶滅危惧種に認定しようとしているのだ。
日本は当初フランス、スペインなどが反対に回ると踏んでいたが、説得されて賛成に回り苦戦している。その上アメリカも反対とか。

これは私の勝手な推測。どうも背景に国民感情がる様に思う。自国の海とはどこまでをさすべきなのか。絶対的な理論など無い。領海はだんだん広がり、今では200海里らしい。
しかしそれ以上にヨーロッパやアメリカにとれば大西洋は我らの海、という潜在的な観念が強いのではないか。そこに東の果てから日本などという小国の船がやってきて、底引き網でごっそり掻っ攫ってゆく。公海だからと論理で分かっていても面白くない。
実は同じことがあの鯨についても言えるのだとおおもう。ニュージランド、オーストラリアが日本の捕鯨に強く反対している。背景に南氷洋は我々の海、そこでわれわれが可愛がっている鯨が捕獲されている、と聞けば反発したくなるのだろう。
昨日のTVで今回の提案に反対しているのは日本のほか韓国とオーストラリアだと聞いた。オーストラリアがねえ、と私は思った。鯨のときに唱えた環境保護は造られた理由、それが遠い向こうのマグロならかまわぬ、という風に見えるからだ。また20年も前の話だが大西洋にあるスペイン領カナリア諸島に行ったことがある。そこで活躍しているのはもっぱら韓国の漁船であった。彼らもまたマグロかどうか知らぬがそちらを漁場にしているのだ。

最後に本音をぶちまける。正直言って、私は魚は好きだが、漁師のエゴにはついてゆけぬ。まず海。土地と違って権利を買ったわけでもないのに、漁業権を主張したり、養殖のために勝手に利用したりする。もともとはみんなの海ではなかったのか。また昨年は原油が値上がりしたから、といって政府に補助を要求した。つまり我々一人一人に税金で助けてくれ、と言っているのだ。「そんなに遠くまで行って、他人様の前の海で魚を収奪してくることはなかろう、原油が高いと感じればやめてしまえ。」と言いたくなる。

(後記)18日。モナコの動議は反対多数で否決された。投票国のうち賛成は20カ国にとどまり、68カ国が反対、36カ国が棄権に回った。予想を上回る大差。日本国民としては喜ぶべきだが、一方で資源管理はこれからも大切、と感じる。それに私自身はこの論で一番最後に指摘した意見を、やっぱり変えるきにはならない。

註 ご意見をお待ちしています。
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読者から次のようなメールをいただきました。

A氏:寿司とマグロの関係はどうもなかなか断ち切れないらしい。
漁港の有る町はどこでもすし屋があるが、地元でとれない
マグロがかならず置いてある。地魚のみというところは
少ないのだろう。すし屋とマグロは不可分ともいえよう。しかし
牛肉の握りを食べてみたらマグロのトロよりよかったような気がした。
馬肉とか牛肉を工夫して使うのも良いかもしれない。

B氏:大西洋のクロマグロの件については会議の結果に胸をなでおろしています。(私も阿笠さんと同じで、マグロより白身の魚が好きですが)
今回の「モナコの提案」については適用する国際条約が的はずれではないのかという感じです。
パンダやアムールトラさんみたいな絶滅に瀕している種を保存するワシントン条約の対象に、マグロを入れようといううのは基本的に問題が有ったと私は思います。資源の科学的な評価が定まっていないのに、感情的な規制は、クジラの規制と本質的には同じだと思います。(クジラの捕獲規制の国際条約を作った時、欧米がクジラとは全く関係の無い途上国を手練手管で取り込んだことはいまだにに語り草です。正義とは何かと深く考えさせれます。そもそも、欧米各国はその昔、灯油(鯨油)の確保のためクジラを乱獲してきました。ぺりーが日本に通商をせまったひとつの理由にも、自国の捕鯨船団に水や食料をを供給してくれとの要求が有ったとのことです)クジラを大切な神の恵みとしてきた日本の食文化とは大いに違いが有ると言う思いです。(欧米が昔の悪行を悔い改めるために、大切にクジラを扱ってきた国に説教をするような行為は片腹痛しです)
今回オーストラリアがクロマグロの規制に反対したのには、驚きました。クジラには反対だがマグロは良いというのはどのような背景が有るのでしょうか(シーシェパードはマグロの規制にも賛成しているようですが)教えていただければ幸いです。
私には欧米人の感覚がよく理解できません、牛、豚、鳥は殺して食用にしても罪悪寒はなくて、クジラやイルカは神聖な生き物で食べてはいけない、どこで選別しているのでしょうね。オーストラリアでもたくさんカンガルーが処分されているようですが、コアラはたいせつにして、カンガルーは食用その他処分しても意に介さない、クジラとどこが違うのか理解を超えます。阿笠さんが言われるように自国の領土や影響圏に関係するのでしょうかね