著者辛坊正紀は実業界、辛坊治郎はニュースキャスターなどで活躍する気鋭の経済論客
格付け会社がギリシャ、ポルトガル等の国債債券の格付けを大幅に下げ、ユーロに対する不安が広がり、大変なことが起こりそうな様子の昨今。こういった問題、実はいつ日本に起きてもおかしくない状況、これを一歩進めて理解するために好適の書である。
サブタイトルを「ある日、この国は破産します。」とし、帯には暴論、亡国論にだまされない、スラスラ読める経済入門書とあり、そでには「政府の借金は786兆円」「日本を破滅させるバラマキ政治家の人気取り」「国債を払い戻せなくなる日」「先進国中ずばぬけた政府の借金」「1400兆円の個人預金一斉引き出し」など歯に衣着せぬ言葉が並ぶ。
著者はまずGDPの定義から始める。GDPとはすべての経済活動の合計。主として企業が生み出し、日本ではその額516兆円。これが家計と企業自身に分配され、さらに家計と企業と政府に再分配される。GDPが大きくならなければ分配が増えない、早い話が給料が増えない、ということをまず持って認識させる。そのために企業群が生み出す付加価値を増やす以外に方法はない。かっての日本はこのGDPが毎年10%も成長していたが最近は1%程度、逆に中国がそのくらい成長している。
国債とは政府の借金である。国家の運営が税収だけでは出来なくなったために、国債を発行するようになった。その引き受けては大手銀行であり、これに郵便貯金が加わろうとしている。彼らが持っている金は、国民の金が預金として還流したものである。
この残高が対GDP比で2倍以上、格段に高くなってしまった。そのため国家予算の多くが今ではその利払い等に当てられている。国債が返せない様な状況が近づけば、金利が上昇し、ハイパーインフレーションが起こる。古くはアルゼンチン、今はギリシャ、ポルトガルに起ころうとしていることが起こる。
これらの基本的問題点を指摘した上で、著者は小泉政権のやろうとしたこと、現政権のやろうとしていること、世の中に出回っている偽の理論を厳しく糾弾する。
マスコミは小泉・竹中時代を若者から職を奪ったなど非難するがその功績は大きい。それはデータが示している。
株価はそれまで下がり続けてきたが、上がり始め外国の株価と同期し始めた。経済成長率も実質でも名目でも改善させ、プラスを保った。失業率は下がり、有効求人倍率は上がった。支出抑制によって財政均衡を目指し、おおむねそれに成功した。貧富の格差を示すジニ指数はそれまでの流れで拡大し続けたがその速度はゆるくなった。
小泉政権への非難が高まったのは、政権退陣後で新自由主義的な市場原理主義が格差を拡大した、というものだ。既得権益を失う人たちのアジテーションのようにすら見える。
郵便貯金と簡易保険をあわせた300兆円のうち80%は国債の保有にむけられている。
過疎地にも郵便局存続を、など色々言われるが、本質は「政府が便利に浪費している国民の貯蓄を、民間企業の成長資金としてとりもどすこと」であった。しかし郵政ファミリーの猛反対等で退陣後たちまち骨抜きにされてしまった。「改革の痛みを超えなければ日本は死ぬ」と考え、小泉政権は国民に自立を求めた上で成長戦略を描いたのだ。
安倍政権は、戦後の行政、教育、安全保障、経済などの枠組みを時代の変化に合わせて、作り変えようとしたが、経済の成長戦略がみえにくくなった。福田政権を経た麻生政権では小泉構造改革路線を明確に否定し、基礎的財政収支の黒字化目標を延期して、財政出動を一気に加速させた。財政赤字は拡大し、失業率は上昇に転じた。
鳩山政権にいたっては、パイを大きく戦略ではなく、まずは財政支出を拡大して国民の生活を優先することを先決とした。子供手当てはその典型的な例だが、ツケを結局その子供たちに回すことになる。他にも高校の実質無償化、医療と介護の再生、ガソリン税の暫定税率廃止。農業への個別補償など消費者にパイを分配する政策ばかりが並ぶ。
最後に著者は日本を破滅に導く5つの悪の呪文を上げている。
「経済の豊かさより心の豊かさが大切」
衣食足りて礼節を知る。まじめに働きたいと思っている人に労働の機会を与え、衣食を確保する喜びを与えることが大切だ。一人当たりのGDPが伸びない限り、国民生活はあらゆる意味で絶対によくなりことはありえない。
「大企業優遇はやめろ!」
大企業が国外に逃げればそれだけで日本はピンチ。大企業優遇こそが日本を救う方法だ。
「金持ち優遇は不公正だ!」
日本の直接税の大半は金持ちから得られていることを忘れるな。金持ちは少数派だからいじめるのはたやすいが自分たちに戻ってくる。子供手当てで差別するなどおかしい!
「外資に日本が乗っ取られる」
外資が日本に投資するということで、見向きもされない国になったらオシマイだ。
「金をばら撒けば景気がよくなる」
個人資産は1400兆円もある将来が皆不安で使えない。金をばら撒いても貯蓄等に回るだけだ。金を使わせたければ、国民から将来の不安を取り除け!
みなさんはどう考えますか。私はおおむね正しい、と考えています。そしてそれなら自分自身としてどうするべきか悩んでいます。
註 ご意見をお待ちしています。
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