独居老人に大変なのは自分の世界をいかに広げておくかということ。それでもよりによってなんで詩吟・・・・・。
こんな変なものを受講しようと考えたきっかけは、演歌を練習していたときであった。
「武田節」を歌うときにあの「風林火山」の詩をどのようにうなるのか分からぬ。
二月頃にためしで講座の見学をしたが、旅行などの予定が多く受講を見合わせた。今期から受けようと決めた。2週に1度。もっとも見学したとき、詩吟とは音程しかなく、後は唸るだけのように感じたから、余り力が入っているわけではない。書道の続きくらいに考えている。
先生は木村流穂という。名刺をくれた。霞穂流宗範とある。霞ヶ関近くで役人相手に教えていたグループから出たらしい。昭和18年生まれくらいらしい未亡人。若いときロンドンに住んでいたことがあるなどというから、亭主は役人だったのかも知れぬ。中々の美人!
いきなり発声練習だと「あえいおう」などと歌う。
一本、二本などというが所謂歌で言うキーのようなものらしい。
コピー機で印刷した「愛吟珠玉編」なる冊子をもらった。中に二十ほどの詩が載っている。
次に最初に「平常心」
春は百花あり 秋には月あり 夏は涼風あり 冬には雪あり
若し閑事の心頭に掛かるなくんば 便ち是れ人間の好時節
脇に番号が振ってあるからその番号に応じて高低をつけるようだ。
欄外に平常心の意味と「道元禅師が詠んだもので、川端康成がノーベル賞の受賞式で日本の美について講演したときに紹介した。」とある。
生徒は私を入れて3人、ころころした小柄同じような年齢の女性、白髪の中々洒落た感じのこれも同様の年齢に見える男性。みなで練習、私もやらされるがひどいものだ。
また歌で今度は良寛の「時に思う」
なお冊子には偶成、楓橋夜泊、春夜など。書道で書いたことのある漢詩があってうれしい。
一通り教えたところで、先生は白髪男性ばかり指名し始めた。近く発表会があるらしい。
その段階になって先生が基本のようなものを語りだした。
* 和楽ではドレミにあたるものを次のように表し、かく音に対応する
水 Z 一 二 三 三' 五 六 七 八
ミ ラ シ ド ミ ファ ラ シ ド ミ
* 一つの詩に三、つまりミに戻るところが7箇所ある。それで音を調整するとよい。
* 息つぎが問題。切れ目、先端で息を吸い、ゆっくり出してゆくことをこころがける。そのために三に戻ったとき、その音を吟じ続けるのでなく、アイウエオに戻るようにする。つまり、たとえば下ると読むとき「くだる・・・・」でなく「くだるう・・・・」とする。
* 時々楽譜に小さな○が記されている。これは鼻音で読む。
ウイキペデイアに寄れば「詩吟とは、いわゆる歌のように、詩文をリズム、メロデイに乗せて歌うのではなく、詩文の素読(朗読)を基本とし、素読の後に特有のメロディ(節調という)を加えることで、より効果的に詩情を表現する。具体的には、「はーるーこーおーろーおーのー、はーなーのーえーんー」と歌うのではなく、「はるゥーー(節調)こーろーのォーー(節調)、はなのォーー(節調)えんンーー(節調)」というように、語尾の母音を長く引き、そこで節調を行うことになる。・・・・・江戸時代後期私塾や藩校において漢詩を素読する際に独特の節を付すことが行なわれたのが今日の詩吟の直接のルーツである。」とあった。
また別のサイトには平安時代から貴族の間で詩吟法はないにせよ、和漢朗詠集をベースに漢詩朗詠が行なわれていた、とあった。
なおインターネットには多くの詩吟教室、グループサイトが紹介されており、その中には朗詠を聞くことの出来るサイトもあるから楽しい。
帰りに先生も入れて4人でお茶を飲む。駅前ビルの2階。名物というぜんざいとコーヒーをミックスしたようなものを食った。
(後記5月16日)
その後気楽に練習を続けている。
* 詩吟は普通は漢詩の5言絶句ないし七言絶句を詠う。大体2分である。短いものをこんなに長く伸ばすのだから、途中のうなる部分がひどく重要で長くなる。ところで最初の演歌「武田節」の「風林火山」、あれはまるっきり違うもののようだ。カラオケテープで聞くと、詩吟の部分は、大体30秒しかない。うなりはほんのちょっと、ということに成る。また詩吟は第三節を音程をあげるが「風林火山」は下げる。考えてみると風林火山は「孫子」から取ったもので、漢文では「疾如風、徐如林、侵略如火、不動如山」。絶句に較べればずっと短いから、こうなるのかも知れぬ。
* 最初に行なう発声練習は案外いいものだ、と気づき始めている。これで下手な演歌も、おめず臆せず周りの迷惑を考えずに歌う度胸がつく。
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