869「「「日本人へ」・・・リーダー編」・・・・文春新書」を読んで」(5月31日(月)〔晴れ〕)

あの「ローマ人の物語」の塩野七生の著作。書店で発見したときに、何故、今、この本が、といぶかしく思った。文芸春秋に連載されたエッセイをまとめたものだが、小泉時代を視点にすえて書かれている。しかし読み終えると、今だからこそこういう書物が必要と思えてきた。以下、ほんのポイントと気のついたこと。

「イラクで殺されないために」
日本の目的は@軍事上の派遣ではなく、政治上の目的達成のための派遣であることAそれゆえ、日本の兵士からは一人も犠牲者を出してはならないこと。・・・・この目的達成のために日本が参考になる国はアメリカでも、イギリスでも、ドイツでも、フランスでもなくイタリアである。
「若き外務官僚に」
外交官になろうとしている人に私なら言うであろう、という視点である。これからやろうとしているのは、「外交」ではなく、「外政」である。つまり外国と交わっていれば済む問題ではなく、外国との間で政治をすることである。目標はずばり「日本の国益を守ることである。」国連中心の国際政治ゲームでは、カードではなく剣を両脇にして向かう。切れ味のよいほうから分けて@拒否権をもっていることA常任理事国であることB海外派兵も可能な軍事力C核をもっていることD他国に援助も可能な経済力、と指摘する。
「政治オンチの大国という困った存在」
ブッシュの犯した誤りはいくつもあるが、振り返る価値あり、とするのは「テロは戦争であると規定したこと。戦争ではなく、犯罪とすべきであった。」前者だと敵とされた側を団結させてしまう、後者ならテロを計画し実行した者のみに限られる。

「プロとアマの違いについて」
プロの音楽家を例に取っているがすべてに当てはまるように見える。まず反省すること、良い結果を得られなかったのはなぜか、自己の反省に限定して行なう必要がある。次に自己反省は絶対に一人でなされねばならない。決断を下すのも孤独だが、反省もまた孤独な行為である。
「なぜこうも政治にこだわるのか」
魚は頭から腐る、というのがある。魚の身にあたる庶民は、意外と常に健全なのだ。しかし頭が腐ると、それもいずれは身に及んでくる。
「カッサンドラになる覚悟」
男神アポロンは、惚れたカッサンドラに将来を予見する能力を与えた。ただし彼女がいかに将来を予見し警告を発しようと人々からは聞き入れられず信じてもらえない、という条件をつけて・・・・。トロイの滅亡を予告するが決して聞き入れてもらえなかった。マキアベリもいう。「武器を持たない予言者は、いかに正しいことをいおうが聴きいれてもらえないのが宿命だ。」

「倫理と宗教」
日本では昨今著しい倫理の低下が指摘されている。倫理は宗教と結びつくが、一神教的視点から見ていないか。倫理は、多神教の時代にも十分あった。世界はキリスト教とイスラム教という一神教が主流だが、一神教と多神教の最も本質的な違いは、一神教には他の神々を受け入れる余地は無いが、多神教にはあるというところにある。我々日本人は多神教ゆえの「寛容」を旗印に掲げることができる。
「「歴史認識の共有」について」
日韓でも日中でも、学者たちが集まって歴史認識の共有を目指すのは時間とカネの無駄である。時間と金は中国と韓国と日本の教科書の英語訳を毎年作っておくことに使ったらどうか。法廷に引き出されたときの証拠を今から作っておくのだ。
「拝啓 小泉純一郎様」
あなたの政治の軸足はぶれていない。あなたの政治のポイントを、いくつか抜粋すれば次のようになろうか。@日本の最大の政治改革は行財政改革。既得権を手放してもらわねば出来ず、そのために痛みが伴う。A郵政改革の根本は民間で出来ることは民間にまかせろ、ということだ。そうしないと役人がへらない。B日本を変えるか変えぬか議論するときでなく、変えないとだめになってしまう。

「知ることと考えること」
現代は情報であふれている。それらをおってゆくのは大変だ。しかし情報に接する時間を少し節約して、その分を考えることに当てるのが大切なのではないか。
「自尊心と職業の関係」
失業とは生活の手段を奪われるだけでなく、自尊心をはぐくむ手段さえも奪われる。
「乱世をいきのびるには」
日本は、国連で主導権欲しさに悪あがきしても効果なし、と常任理事国入りの件で分かった。援助外交も効果なし。八方ふさがり、ならば足元を見据え、経済と技術の向上に振り向け「自分たちだけでやれること」にもう一度目をむけてはどうか。

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