887「為替相場・・・薄氷の円高」(8月7日〔土〕晴れ)

この前珍しく買った夕刊フジには「行き倒れ」記事以外にもう一つ気になる記事。
「円最高値78円予測、ドバイ越え視野、長期金利1%割れ長期化」
「ドバイショック直後につけた84円82銭の突破が十分視野に入ってきた。先行き不透明で株式市場が安心できぬため、その金で他通貨に比べ相対的に安全とされる日本国債などの債券が買われている。結果、長期金利の指標となる新発10年国債の流通利回りは2003年8月以来7年ぶりに1%を割り込んだ。米国の景気減速懸念が強まる中、米連邦準備制度委員会(FRB)による追加緩和の期待も金利低下の材料となっている。少なくとも8月10日の米連邦市場委員会(FOMC)、あるいは9月のそれまで日米の長期金利低下傾向が続きそうだ。」〔要約〕
875「為替相場・・・私の素人考え」でこんな風に書いた。「ドルは円に対して思ったより下がらなかった。これは寧ろ予想通りだった、というべきか。日本の抱える少子高齢化による国家としての力の低減、ギリシャよりもずっと高い国債依存度、それらを突きつけられても中々反応しない経済政策などを考えれば、長期的トレンドで見れば円安に進むと考えるからである。円高になっても一時的と思っている。」
しかし現実に起こっていることは逆ではないか。えらいことだ!

これについて8月5日の日本経済新聞の記事。「今、なぜ日本が「買われる」か」
@ バーナンキFRB議長は、景気の異例の不確実性指摘とし、セントルイス連銀ブラード総裁論文は、「米経済は日本のようなデフレとゼロ金利の持続という「デフレ均衡」に陥る可能性がある、それを防ぐには金融の量的緩和が必要、としている。欧州中央銀行(ECB)もこれに追従せざるを得ない。
A これらの政策は、デフレ防止や金融不安封じ込めと同時に、自国通貨安による外需の拡大を狙っている。「緊縮財政による内需の落ち込みは、ユーロ安による外需の拡大でほぼ相殺される。」欧州のある首脳はこう言ったそうだ。オバマ政権がめざすものは個人消費から外需と設備投資に軸足を移す「ニューミックス(新しい組み合わせ)だ」だ。・・・・金融緩和とドル安はニューミックスの政策手段である。」
B それでもなぜ日本は買われるのか。米欧金利が低下するに連れて日本との金利差はぐっとちじんで来たからだ。かってよりは目先の利ざや稼ぎの対象になりやすい。しかも日本は、巨額の赤字を抱え、財政政策でも動きにくい。さらに参院での与野党逆転、9月の民主党代表戦もあり政治は動けまい・・・・市場はこのように読んでいるという。・・・・・本来なら政策不在は売りの要因。ところが、米欧が動くときに動かざる日本は、かえって先の読みやすい「アンカー〔いかり〕役」だ。
C 菅首相は今年1月財務相に就任したとき「1ドル=90円半ばの円安が望ましい」とのべ「政府と日銀が一体となったデフレ脱却を主張した。ところがその水準が10円も円高に振れた現在首相官邸から危機感が伝わってこない。日銀の動きも長期金利が低下しているので安心しているのかどこかはっきりしない。・・・・・・結果、大企業は「もう国には頼まない」とばかりに、生産や設備投資の海外シフトを加速させている。」〔要約〕

同じ日の同新聞社説「政府・日銀は円高加速に機動的対応を」
「企業が比較的冷静に円高に対応しているといっても、大手製造企業を中心に海外生産・海外販売の比重を高めてしのいでいる面が大きい。円がさらに上昇すれば成長力の低い国内を見捨て海外に走る動きが加速しかねない。雇用の裾野の広い製造業による生産の海外移転は、国内の雇用を失わせる要因となる。介護などのサービス業で雇用を作るといっても、賃金水準が相対的に下がる可能性が大きいことは覚悟する必要がある。企業の海外拠点からの受け取り利息や配当は日本経済を下支えするにせよ、雇用創出効果は小さい。
この海外移転を抑えるには、労働規制の強化をやめ、法人税を下げるとともに、円高の行き過ぎに歯止めをかけることが欠かせない。円高加速局面では、日銀が一段と金融を緩和したり、米国など海外の理解を得た上で円売り・ドル買い介入を実施するとともに、介入で供給した円資金を市場に放置することも必要になるかもしれない。政府・日銀は経済のリスクを先取りし、機動的に動くとの印象を与えて経営者心理の下振れ払拭に努めるべきだ。」〔要約〕

日本経済が、国債依存率が異常に高く、将来的には危険でも、当面は政府と日本の銀行、言い換えれば国民が国債を通して依存しあっており、それが一時的な安定を生み出している。その安定が続く限りは円を買おう、というのである。ことが大きくなり、たとえば国家が国債利子を払えなく成るような事態になれば一斉に彼らは円を売り、日本がハイパーインフレーションに陥る可能性を捨てきれない。

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