908「珍客到来、シュッ、シュッ」(10月29日〔金〕曇り)

電気をつけると、洗面台の上に中型のゴキブリ。
ゴキブリジェットを構え、さあ、と思う頃、ゴキブリも、これは大変と考えたかあわてて逃げ出す。しかし真っ白な洗面台。吸い込み口は受けがあるから入れまい、どこにも逃げられまい、もうこっちのものだ、と考えたところ、逃げ道がもう一つあった。
洗面台の水があふれたときに流れ出るためにある小さな穴。
さっと逃げ込む、癪にさわるからゴキブリジェットのプラスチックノズルの先端を無理やり其の穴に突っ込んでシュッ、シュッとやったが効果があったか、どうか。
しかしゴキブリはこんなところまで逃げ口になるのかと、妙に関心。我が家は実は家に入る穴は、全部ふさいだつもりで居た。元は鼠対策である。夜寝床に入る。するとカタカタカタと天井を鼠が走る音。天井と部屋の間に入れるところはないはずだ、と大工に相談すると、家の周りを調べ、換気のための小さな穴があることに気がついた。そこをふさいでもらうと、鼠は音を出さなくなった。ふさいだときに家の中に鼠が居たかどうかは知らぬ。いた、としたら天井裏で餓死したのかもしれない。

しかしゴキブリは、もっと小さい穴でも侵入できるというわけだ。思わぬときに思わぬところでゴキブリを発見。この前は夜寝床に入って、鼠と同様、電気を消してから・・・・・。
このような状態にすると静かに感じられ、普段聴きなれない音まで、聞こえるようになるから不思議だ。昔はこうすると中央線の汽車の音が聞こえたものだった。
最近はよくサイレンの音、また年寄りが倒れ、救急車が走っているのか。アパートに夜遅く帰宅した若者たちの声、秋の虫の音・・・・・・様々である。
しかしこのときの音は、そのどれとも違っていた。がさっ、がさっ・・・・・。察知した私は、暗い中を起き上がり、ゴキブリジェットを片手にし、電気をつけ、廊下との間を隔てている障子をさっと開く。「長谷川平蔵だ、神妙にお縄を頂戴しろ!」そんな気分!少し大きいゴキブリが、亡くなった妻が大切にしていた置き水家の裏に逃げ込んだ。仕方ないから、置き水屋のうらあたりにシュッ、シュッ。とにかく音が出なくなったからそのまま寝込んだ。数日して水屋の脇で仰向けになったかのゴキブリ君の骸(むくろ)発見・・・・・。

しかしゴキブリは、どうしてこう嫌われるのだろう。
ゴキブリというと、私は確か野坂昭如だったかの短編を思い出す。タイトルがそうであったかどうか忘れたが、書き出しがみな「昭和20年八月十五日」になっている短編集。
其の中の一編。「其の日、特攻隊で出陣した少年兵の飛行機が、南の無人島の海岸に不時着してしまった。飛行機から降りるが何もない。ずっと長い間眠るような時間を過ごした。ふと気がつくと飛行機の上に一匹のゴキブリがいた。少年は其のゴキブリをひどくいとおしく感じた。」そんな内容であった。そんな状況ならそんな風に感じるものだろうか。
ウイキペデイアで調べるとなかなか面白いことが書いてあった。
「この昆虫は、日本では害虫として有名であり、人間に嫌われる対象の代名詞ともなっているが、世界的には必ずしも害虫扱いされているわけではない。」
ペットになったり、食用にあったり、実験室で使われたり、薬の原料になったりしている。
しかし残念ながら、我が家の主人たる私は日本人、ペットにする趣味もない、ゴメンね!シュッ、シュッ。
このシュッ、シュッの欠点は、ゴキブリ君が台所に現れること。うっかりやれば食器に懸かり、人間様の胃のなかに入りかねぬ。いくらもう赤ちゃんを作ることはない年齢、と分かっていても、いやなものはいやだ。最近は、たとえば洗剤を使うことが研究されているらしい。ゴキブリの体は脂で覆われている。そこでこの直接ふりかけ、更に回りに輪を作ればこの脂が抜け落ち、ゴキブリは絶命するという仕掛け。しかし私は余りうまく行かないような気がする。ゴキブリはそんなにもたもたしていない。やっぱり、シュッ、シュッ。

閑話休題、さらにウイキペデイアを読み進めると
久里洋二の絵本に「ゴキブリちゃん」と言うのがあるそうだ。2005年にTBSから放送された。主人公はサラリーマンの家で暮らすヤマトゴキブリ、サラリーマン一家に好かれようと日々努力している。しかし奥さんはゴキブリが大の苦手で、お兄ちゃんは憂さ晴らしのために、いつもゴキブリを攻撃している。そんな設定で、全部で20話もあったそうだ。
また「メキシコ民謡の「ラ・クカラチャ」とは、スペイン語でゴキブリのことだが、この歌が指すゴキブリとは人のことであると言われている。」いつかトリオロスパンチョスの歌っているのを聞いて、すっかり本物のゴキブリのことと思っていたのだが・・・・。

そろそろ書くことがなくなった。この私の知識の薄っぺらさ!それではみなさん、ゴキブリさんの冥福を祈ってお寝みなさい。

註 ご意見をお待ちしています。
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読者から次のようなメールをいただきました。

ゴキブリは人類発生以前から地球にいたのではないかといわれています。
生命力はつよいですね。
明るいところで人間に見つかると、少し暗いところとか物陰に隠れてじっとしていて人間があきらめるのを待つみたいですね。大体打ち漏らしてしまいますね。
なかなか討ち取れませんね。
しかし我が家の飼い猫と一度遭遇したときはこの手では逃げ切れなかったようです。
アナにもぐりこんだのですが、猫は小生よりも暇なのでその前にずっと座って待っていました。
もういいかと思って出てきた時に強烈な猫パンチを食ったのでしょう。ショック死した死骸が転がっていました。