「海上保安庁からもれたんでしょう。そういう噂ですよ。」と巷の某。例の尖閣ビデオの流出問題である。考えてみれば、いつも中国漁船に悩まされている、自分たちの立場はまったく考えずに、明らかに悪いはずの船長、乗組員等を簡単に解放してしまった。さらに自分たちが苦労してきたビデオはなかなか公開させない、公開しても一部の国会議員が見られるだけだ、こんな馬鹿なことがあるか、そういう気持ちになるものがでても不思議ではあるまい。
別の某は「那覇地検ではないか。」といった。告発の方針が固まっていた。ところがそこに突然天の声で、釈放しろ。どこに社会の正義があるのか、と義憤を感じても不思議ではない。大物政治家の名を上げるものもいた。こうなれば菅政権が窮地になろう、思う壺だ、というのである。
真偽の程は今後の捜査に待つより仕方があるまい。
しかし確信犯であることは間違いないように思う。犯人は決して悪いことをした、等という意識を持っていない、むしろこの騒ぎに満足感に浸っているのではないか、と思われる。企業や官庁の内部告発が大いに奨励される時代である。その元になるのは個人の何が正しいか、という判断である。たとえば最近大阪市の清掃職員が集めた川のゴミから現金を探し出しネコババした事件が報道された。分け前に預かれなかった、という考えもあろうが、多分はこういうことはやっぱりいけない、という本人の判断から告発したのではないか。今度の問題だって普通の人間からはそんな風に考えられないか。オカミが正しい、法律が正しい、などと正義を強制できる時代は終焉をむかえているのだ。
今度の事件について二つのことが騒がれている。
第一は犯人の探し出しである。是は確かにその通りだ。「国家の機密らしきもの」がこうやすやすと流出するようでは問題だ。今回、前後してテロリストに関する警察庁の極秘資料がインターネットに流れてしまったという。投稿者が発覚しないようにルクセンブルグ経由ででたというから御念が入っている。これでは日本の機密体制に疑問をいだかれても仕方がない。対策が急がれる。
もう一つはそもそもこの事件についての「政府の迷走が国民の反発を呼んでからだ、今からでも遅くはない、ビデオを全面公開しろ。」というものだ。
中国で反日活動が燃え上がり、それを背景に無茶を言う中国政府に対して、日本は「事実を世界に見せる。」という強力な切り札があった。それをあえてとめさせたのである。石原都知事の発言「政治よりも商売を優先したということでしょ。しかし国家には経済以上に大切なものがある。」を思い出す。
政府は日本経済新聞社説に寄れば「刑事訴訟法の規定を盾に、公務執行妨害事件の証拠であるビデオは公開できないとしてきた。しかし同規定の趣旨は、最高裁判例によれば@裁判に不当な影響をあたえないA事件関係者の名誉を傷つけない。・・・・の2点にある。中国人船長が既に帰国した現、証拠ビデオを公開しても同規定の趣旨には反しない。・・・・政府がビデオを公開しようと思えば、法律的には必ずしも不可能ではなかった。それでも一貫して公開に後ろ向きだったのは、日中関係への配慮という政治判断が働いたからだろう。結果論からすれば、そうした対応は誤っていた。政府がビデオの流出を許したことで、それをきちんと公表するよりもさらに悪い影響を日中関係に及ぼす可能性が出ている。」
最後のところは要するに日本国民の間の反中国感情をいたずらにあおり、更に中国国民は自国のやり方を支持してきた、そこに「十日のあやめ」のようにこのように言われれば、事件を冷静に見るどころか、ナショナリズムを煽る可能性があるということだ。国家の関係も国民同士の感情となれば個人の感情の動きと似てくる。
最後にまったく個人的呟き。政府は犯人探しに躍起になっている。しかしそれより先に、遅ればせながらのビデオの公開をすべきだ。そして今後の対策ではないか。あの事件の後、しばらくはビデオの重要性など指摘されなかった。違反と分かっていても自分たちがかかわった行為であればコピーくらいしたいと考えるのが当然だったのかもしれない。その辺をどのようにこれから考えてゆくのか。
今回のビデオの最後には「sengoku38」と書かれていたとか。勿論仙谷氏への当てこすりである。38は「サハ」だの「仙谷さんパー」だのいろんな憶測を呼んでいる。私には仙谷氏は一体何を考えているのか分からぬ。ある左派の男の話を思い出す。「離島なんか周辺諸国にくれてやればいいんだ。沖縄は本来独立すべきだ。」この男の延長には、ついでに日本から米軍がいなくなって、中国が日本を守ってくれればいい、とでもあるのだろうか。人の心の奥底は分からぬが、仙谷氏がそうでないことを望む。
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