今年の紅葉は安達太良山と五色沼で十分満喫、と思っていたらもう一度チャンスがあった。
高校同期の友人と昇仙峡にこの2日間かけていってきた。甲府湯村温泉は、東京に住んでいる者にとっては一番手軽で素晴らしい温泉のように思う。甲府は荻窪から鈍行に乗ったって3時間足らずで行ける。湯村温泉は甲府の町の中にある、といってよい。駅から4,5キロくらいだから、タクシーやバスでいいが、元気なら歩いてだっていけぬことはない。
甲府は其の上見るべきものが多い。湯村温泉は昇仙峡の入り口、そのほか山梨県立美術館・・・・ここはミレーの作品が充実している。武田神社など武田関係の名所。水晶等々。
われわれは初日山梨県立美術館、二日目に昇仙峡、武田神社を見て帰った。同行の友人は初めてのようだが、私はもう何度目だろう。
山梨県立美術館、ミレーは相変わらずだが、あの宝塚の創設者小林一三の特別展をやっていた。庭の紅葉が丁度いい頃。広々と随分贅沢な美術館である。
昇仙峡は昔来たときは仙娥滝を越えたあたりで上に出なければ成らなかったように思うが、今は川沿いにかなり続いている。主峰覚円峰はその昔 覚円が畳が数畳敷ける広さの頂上で修行したと言い伝えられる峰、ここのシンボルで紅葉とあいまって絶景。シーズンなのに人でもそれほどでもなく、ありがたい。石門は巨大な花崗岩に囲まれた石門は先端がわずかに離れスリリングな不安定さを満喫できる。
ドノ辺まできた?と地図を見ていると「9番ですよ。よかったらコーヒーでも飲んでいきませんか。」商売のうまいお兄さんに誘われて、渓流に面したテラスでそばを食う羽目になった。私はそれなりと思ったが、友人は「高尾の立ち食いそばのほうがうまい。」というから、はっきりとはいえぬ。しかし景色は最高だった。
昇仙峡から武田神社に行くために乗ったタクシー運転手はおしゃべりだった。
「紅葉で赤く色づく木は7つしかない。知ってるかい。」「モミジとカエデの区別がつくかい。」「この辺はマツタケがとれる。赤松があって南向きの斜面がいい。いつか聞いたばあさんなど一日に40本もとっていた。一本7000円、タクシー運転手なんか、やってられないや。」「あれは千代田湖さ。人口湖でね。ブラックバスばっかりとれる。しかしあれもフライにすればおいしい。」「常盤ホテルか。あそこの特別室は一泊30万円だそうだ。建て替えのとき、地元と高級客しか泊めぬ、ということだったが、3年もあとには、一月に限って1泊1万円で募集した。勿論すぐにいっぱいになった。」「松の葉は普通2本だが、武田神社のものは3本一緒になっている。お金がたまるそうだ。おいらも財布に入れている。」「おや、もう武田神社だ。お濠に白鳥、一羽でも「ひゃくちょう」とはこれいかに。おいらは鴨二羽で上機嫌。」「じゃ、帰りも駅まで乗っかってね。仲間に声かけとくからさ。」
折から七五三、きれいなベベ来た子供が父さん、母さんにつれられて和やかな雰囲気。しかしあの運転手め、鴨と一緒にしやがって!松の葉はしっかり落ち葉になって茶色になったものを採取したが、癪にさわったから、駅まで歩いた。途中に山梨大学があり、若者が沢山居た。駅前を整備しているのか、あの武田信玄像がみつからなかった。駅に着き、友人のぼやくこと「疲れた。オレの足にはタコが三つも出来ているのだぞ。それに靴も新しい。」
最後に宿泊した常盤ホテル賞賛。いつも財布を気にしている私、せいぜい2万円程度までのホテルしか泊まらぬ。しかしそうなればそれなりの施設、それなりの食事、それなりの応対、なかなか満足の行くホテルに当たらぬがここは例外。
3000坪の回遊式日本庭園、それを見下ろす6階の部屋に泊まった。庭の反対側には小さな池と離れが作られている。あそこも泊まれるようだが、値段は大分高いのだろう。夜ともなれば甲府の市街の明かりがはるかに見える。皇族がよく訪れたホテルらしい。今上天皇、美智子后などの写真が、ところどころに張ってある。最近は将棋の大きな大会が開かれるらしく、大山名人、羽生名人等の対局などの様子が写っている。
翌朝、庭を散歩して、板塀が特別に打ち付けられ、施錠がしてある「離れ」に気がついた。その一棟は園内に作られた唯一の滝に面している。私の勝手な推測・・・・・多分皇族専用で、汚れる、庶民は泊めぬということなのだろう。特に朝食バイキングがよかったが、其の中に鶏モツの煮込みがあった。中々美味、聞くところによると、最近B級グルメのコンテストがあり、今年は山梨のこれが優勝したのだそうだ。
日本のホテル、旅館の競争はずっと厳しい状態が続いている。其のせいで今回はこの値段で泊まれたということか。しかし機会があれば泊まっておいて損はない、と思う。
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