933「それぞれの道」(12月12日(日)晴れ)

私は一応東京陸連のB級審判員ということになっている。今日はその話から。
すらっとした目元の涼しい男、Aとワッペンに書いてある。61歳という。
東京マラソンに最初の会で出場したことがあるそうだ。
学生時代から陸上の選手、早実出身、「大学もそちらかい。」と聴くと「いえ、勉強はしなかったので別の私立です。」というようなことを言っていた。
朝、昼飯などを通して話しているうちに
「去年研修を終えて、登録したばかりだ。今年はこういうものに30回も出席している。しかし私の友人はモットすごく50回だそうだ。もう10年早くこちらの道に進んでいたらよかったのかもしれない」
私のわずかに3回というのを聞いてあきれていた。

「遅くは無いさ。61歳ならこれからどんどん出席して、早く上の級に進めばいい。」というと「実はそこで悩んでいるのですよ。冬が来るとめっきりこういう会が少なくなる。そうすると存在意義がなくなったみたいに、感じるものがいるそうです。俺はいったい何をやっているんだろうって感じる。たいした金をくれるわけでもない。」
私の答え。「私の場合はラジオ体操をやっていてB氏に誘われて入ったに過ぎない。そんなに熱心にやるつもりは無い。しかしこれも好きであるとか、肩書でもほしいとか、そのような目標があるなら熱心にやったらいい。仕事自体はボランテイアだよ。仕事らしい仕事ではないが、それにしたって1日2000円か3000円、ダイの男がやる仕事じゃない。」
「そうなんでしょうね。30回も50回もやるとそれが完全に生活の一部になってほかのことが出来なくなってしまう。年限の時間は結局のところ1日24時間しかない。」
「そうだね。だから私は寧ろ逃げ回っている。しかし生きがいにしている人もいる。Bさんみたいにね。」

練馬区民の駅伝大会。園内をぐるりと走って約2.5キロ。1周してつなぎ、一組が4-5人、中学生の部、高校生の部、一般などに分かれている。のんびりした大会。
会場の光が丘はフリーマーケットが開かれ、陽気のいい休日とあって、人出が多かった。特に目立ったのが自転車。私は競技場近くの十字路で交通整理みたいなことをやった。なかなかワガママな人が多く制止しても無理やり突っ込み、選手とぶつからないかとはらはらさせる。
「とにかく喧嘩をしないこと。とにかくけちをつけ、争いごとにしたがる不平居士が多い。この傾向は、小学校や中学校でも多いらしいよ。下手に出るより仕方が無い。」
しかしそれをいいことに、こちらを日雇い人夫や工事現場の警備員でもみるような面持ちで見る者が目立つ。しかし午前中で平穏のうちに終わった。

夜、静岡の従妹から電話がかかってきた。今年一度は彼女と会いたいと思っていたが、果たしていない。元気で目医者をやっているらしい。
三女が結婚式を挙げそれで忙しかったのだそうだ。お相手は子供の頃からアメリカで働いている日本人らしい。彼の国籍がアメリカであると、結婚しても訪問ヴィザしか取れぬから3ヶ月に1度日本に帰らねばならぬ。それが漸く取れて結婚したのだという。
「でもあの子はもう日本に帰ってこないような気がする。」と彼女。
「それでもいいじゃないか。何しろお宅は子供が6人もいるのだ、誰かが老後は面倒見てくれるさ。」というと「無理、無理。私は高級な有料老人ホームにでも入ることを考えているわ。ああいうところは図書館まであるのですって・・・・。」
私のことを言うと、「子のことなんかあてに出来ないわよ。」とばっさり。
「この頃の子は結婚すると其の家庭のことばかり考える。親との付き合いは表面重視。そして「もらえるものは何でももらいましょう。」よ。」

そういえばこの前アパートのある若い女の子が退室した。両親は根室に住んでいて比較的裕福らしく、いつも6か月分家賃を先払いしてくる。ありがたい客。出て行った後、大工の見積もりも済み、敷金、家賃の残額の振込先を見ておやおや、と思った。ちゃっかりと彼女の口座になっているのである。その話をすると
「そういうものよ。今回の結婚式は東京シェラトンホテル。随分高かったけれど、すべて私もち。その上、お祝いが沢山届くでしょう。それも彼女のところに行ってしまうみたい。でも私は、これで一つかたづいた感じよ。」
それでいいのかも知れぬ、それが継承というものだ、と思いながら、自分もそろそろ老人ホームでも探さねばならぬか、等考える。

註 ご意見をお待ちしています。
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いただいたメールから抜粋

老後の親を子供が見るというのは、自然界では人間以外には何がいるのでしょうか?
そもそも、親子三代が暮らすのは猿と象ぐらいかしら?
まあ、自然界の大勢を見て、子供には期待しないほうがいいのでは・・・(^o^)