970「北国の春」(6月3日(金)晴れ)

「亭亭白樺 悠悠碧空 微微南来風 木蘭花開山崗上 北国的春天・・・・」
書店で見つけた本を開くと、楽譜とこのような文章が飛び込んできた。「北国の春」の中国版である。中国でよく歌われるカラオケをピックアップし、中国語の学習用にアレンジしてある。CDがついており歌っている呉越華という女性はそれなりの声楽家のようである。

1994年の末に私は、中国の環境案件について調査目的で、中国各地を回ってきた。私たちの調査とさらなる調査を元に、ODAの融資を行なうかどうかを決めると言う。
本渓、包頭、フフホト、蘭州、柳州、いづれも普段私たちにはなじみのない都市。柳州を除いてはどこもひどく寒い。本渓は瀋陽、昔の奉天に近く、満州真っ只中、包頭、フフホトは内蒙古、蘭州はシルクロードの入口にある都市で海抜が1500Mもある。柳州だけは漓江下りで有名な桂林近くで台湾に近い。どの都市も工業都市、近くで石炭が取れ、都市生活に大量に使われている。そのため、昼でも煤塵のせいか少し遠くは見えぬ。
あれは包頭、フフホト辺りのホテルであったろうか。夜寝床に入るとあの「北国の春」のメロデイが聞こえてくるのである。窓を開けて外の様子を伺うと、向かいの広場でテープを鳴らし、この歌を歌っている。客は列を作り、カネを払って歌わせてもらっている様子。日本のこの歌がこんなところで、とずいぶん驚いた。メロデイは少し分かるが中国語ゆえ何を言っているか分からぬ。不思議に彼らの歌う日本の歌のカラオケはこれ以外には「四季の歌」くらい。どこかで「夜来鶯」は日本人が歌うと嫌われるとも聞いた。

我々一行、向こうにとって見ればこれで金を貸してくれるかどうか判断されるわけである。形だけであろうと歓迎しないわけがない。毎晩仕事が終わると食事に行こう、パーテイに行こうと誘ってくる。あるときは其のパーテイ、自分たちでセットしたようだ。楽団?が演奏を始めると、女性たちが次々にダンスを誘いにくる。多くは幹部の奥さんなどであろうか、多分、お客を喜ばせてあげろ、と言われているのであろう。挙句の果てが私たちに縁台に上がれと言う。一人でマイクを持たされ、あの「北国の春」・・・・・。
音楽の神は、私が生まれたときに小用でも足していたのだろうか。まるっきり其の才能を与えてくれなかった。つまり音痴である。歌うばかりではない。踊りもリズムが取れぬからからっきしである。大学生の頃社交ダンスというものを習いに行った。ある男が「ダンスじゃなくてラジオ体操みたいだ。」といった。そんなことであるから中国の人たちをあきれさせたこと請け合い・・・・。もっとも日本人は必ず歌と踊りが得意で「北国の春」は誰でも歌えると言う誤った先入観を払拭させることに貢献したことは確か?

年が明けてからもう一度出張、都合2度中国を動き回ったことになる。しかし私自身の中国本土への旅行は、現在までほとんどこれのみである。しかし今月末から1週間くらい上海周辺に観光旅行に行く。時々NHKの中国語講座を聞いている、習字をやっている、詩吟で中国の詩を歌うことが多い等々、中国は、案外現在の私の生活では関心のある分野。それに旅行費用が29800円と国内旅行よりもずっと安いことに挽かれた。最も実際には一人部屋料金、燃料チャージ、保険料など取られて10万近くにはなるが、それでも安い。いろいろ心配だが一人ならナントカなるだろう。そんな気分。
「お年の割りに、若く見える。其の秘訣は何か。」世間の人はなかなか調子のいい質問をしてくれる。正直うれしい。答えのほうは、分からないが最近は「体力、気力、ある程度の金力に加え、好奇心だ。」と考えるようになった。

この旅行も私自身が見つけた好奇心をかきたてるチャンスとも言える。安旅行だから、一人で動かねばならぬときもあるかも知れぬ、そのときはカタコトでも中国語と今ブラッシュアップと泥縄準備中。この歌もさわりくらい歌えればいいなあ、と本を買ってきた。早速CDをかけてみる。随分高いきれいな声だ。でるわけがない。
「テインテインパイホア、ヨウヨウピコン、ウエイウエイナンライフェン」・・・舌が回らぬ!
呉越華は杭州出身。「北国の春の作詞者「いではく」、作曲者遠藤実と中国を訪問したが、中国では中国の歌手「蒋大為」(ジャンダイウエイ)により大流行した。」とあった。この歌の気分というものはやはり中国人の心にも響くのであろうか。
この本は最後にご丁寧にも「想いを伝える愛のワンフレーズ集」というのが付いている。「愛してる!」「あなたはとても可愛い」「今夜は一緒にいて下さい。」・・・・残念ながらこれらの言葉は使うチャンスも能力も無い気がするが、でも覚えておいて悪くないのかもしれない。「ランウオメンジンワンツアイイチイパア」

註 ご意見をお待ちしています。
e-mail address   agatha@ivory.plala.or.jp
ホームページ    http://www4.plala.or.jp/agatha/