974「クラウゼヴィッツ「戦争論」を読む」(6月13日(月)晴れ)

古本屋が100円で投売りしている本の中にこれを見つけた。
良く話題に出たし、既に読んだ「孫子」の兵法論と並んで、述べられることもあったから読みたいと思っていた本である。
しかし淡徳三郎氏訳の訳文はかなり固く、視力も落ちていることからずいぶん時間がかかった。(別の訳があるのかもしれない。) すべて理解できたわけではないが、考えさせるところが多かった。有名な本であるから、ウイキペデイアにも概要がでており、参考になる。

著者クラウゼヴィッツは1780年ドイツ生まれ、12歳でプロイセン軍に入隊、1801年に士官学校でシャルンホルストの元で教育を受け、次第に政治学・軍事学を習得する。皇太子の軍事教育を担当し、フランス軍と戦うなどした愛国的軍人である。ナポレオン戦争終結後は陸軍軍事学校校長になるなどしたが、1931年コレラにより病死。
この本は1816年から30年にかけて書かれ、未完であったが、マリー夫人の手によってまとめられた。この時代はナポレオンの出現等によって戦争の形態が変わり、総力戦形態に変った時期でもあった。非常に本質を突いた分析的かつ理論的な研究であり、その後のマルクス主義や毛沢東の思想にも大きな影響を与えたと言われる。

以下、抜粋しながらポイントを述べる。
「戦争とは、要するに決闘の拡大されたものにほかならない・・・・敵を強制してわれわれの意思を遂行させるために用いられる暴力的行為である。」
著者は、このように定義しながら、戦争を政治の一手段と捕らえている点で、「孫子」と大きく異なっている。「戦争は政治の一手段である。それは必然的に政治の特徴を帯びねばならぬ。その規模は政治のぞれに対応したものでなければならぬ。従って戦争の遂行は其の根本において政治それ自身である。」(第6章)

戦争の行ない方について基本的な考えを第7章、8章で述べる。
「作戦計画は、全軍事活動を総括するものであり、これを通じて、全軍事活動が一つの終局的な目的を持つ行動となり、あらゆる特殊目的は、この終局目的の中に解消されてしまう。どんな戦争でも、それによって、また其の中で何を達成しようとするのかをあらかじめ計画せずには、開始されるものではなく、また開始されるべきではない。前者は戦争の目的であり、後者はその目標である。」
「いかなる戦争においてもまずしなければならないことは、政治的諸要因の産物である戦争の特質と大体の規模を推定し、把握するにある。・・・・最終的成果を考えずして第一歩を踏み出すことは、ますます許すことの出来ないものと成る。」
「戦争は種々の相互作用から成立し、相次いで起こる戦闘の系列は一個の体系をなし・・・・そこでは一個の成果があるだけである。そこに到達するまでは勝利も敗北もない。」
このように述べた上で、ナポレオンのロシア攻撃を例に挙げている。
モスクワを占領し、ロシアの半ばを征服したが、彼が意図していた講和を結ぶと言う条件でのみ、価値を持っていたに過ぎない。ところがこの成功はロシア軍の粉砕と言う他の1片がかけていた。こちらも兼ね備わっていたときのみ、彼の望む講和が可能であった。しかしこの部分を失敗したために、二度と成功することはなく、最初の部分における成功も無駄となったばかりか有害とさえなった、とするのである。
戦争の目標を、攻撃戦争と防禦の場合に分けて論述している。前者では、敵国の一遍を占拠した場合、利点もあるけれども、其の地で駐留を続けるのか否か、そうした場合の困難さを指摘している。後者にあっては、現状維持を目指すがそれにかかわらず、終局的な目標を自身で見つけることが困難な点を指摘する。その間における消耗の攻撃者に比べて大きい。守りきり、攻めきったとの作戦の重要性を訴えているように見える。
具体的な作戦、考え方等については、本文に譲るけれども、著者は、必ずしも全面戦争だけを考えているわけではない。部分的な目的に応じた戦争もある。どのような規模にするかは、こちらが払うべき代価と得られる利得によって判断される、とする。

日本には幕末から明治にかけて入ってきたらしく、特に森林太郎(鴎外)は紹介者として有名だそうだ。しかし日本人はこの書を読んでいても実際には理解・実践しようとしなかったのではないか。太平洋戦争で最終目標を日本はどのように考えていたのであろうか。みな成り行きで次第に大戦争にしてしまったような気がしてならぬ。
この書は戦争のことを述べているけれども、現代に十分に通じるものがある。日常の行動は言うに及ばず、現代の政治、特に外交の進め方などは大いに参考とすべきと思う。

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