982「土用の鰻」(7月20日(水)曇り)

鰻は高くなってしまったものである。
シラスが取れぬのだから、という。ここまでは同情する。しかし其の後の説明が「乱獲ですくなくなった。」というのだから自業自得?
日本人はどうしてあの蒲焼スタイルがすきなのだろう。いつか東南アジアから男二人に会社の金で特別上等の鰻やにつれて行ってやった。すると向こうは、飯と一緒にぐしゃぐぐしゃに混ぜ、妙なものを食わせるとばかり、むすっとして食った。フランス人を連れて行ったときはうな重の鰻を皿に取り、丁寧に皮をはがして恐る恐る食べていた。蛇でも食わされた、と思ったのかも知れぬ。しかしかく言う私は日本人、大好き。

魚屋は鰻の大売出し。ここで売らなければ損とばかり積み上げている。
「おれは白焼きが食いたい。」「あれは高いのよ。」老夫婦の会話が聞こえる。
じっと手にとって眺めた後、鯵の干物を買い物袋にねじこむ若夫婦がいる。
しかしこの雰囲気、マグロもタイも鰻に比べればまずそうに見える。
西友の地下の食料品売り場で考え込んでしまった。
おばさんが「さあ、鰻だよ、いま焼いたばっかりだよ。鹿児島産だよ。おいしいよ。食べていってごらんよ。」一匹1380円。しかし少し大きい試食用鰻に誰も手を出すものがいない。
私が見ているのはこちらにある二匹パックで1590円の中国産。
ガールフレンドのAさんと二人で食うとして、やっぱり2匹ほしい。
一匹でも半分にしてサラダなどその他をつけても、十分夕食には成るが貧乏臭い。何せ、明日は土用丑の日だ!1380円を2匹か、それともこのパックか・・・・・。

少し冷静に考えようと野菜売り場に行く。あれこれ考えるがやっぱり食いたい。
戻ってくると一休みしているのか、鰻売り場のおばさんが消えていた。
つんと澄まし買い物袋をさげたおばさんがそっと寄ってきて、さりげなく試食用を口に放り込む。すると今度はおじさんが来て口にポイ、それならと私もポイ。
昔、キッチンショウか何かのイベントのコーナーを受け持ったことがある。あれは試食用の食い物を出せば客はどんどん押し寄せる、と知った。それと同じ伝である。売り場のおばさんが戻ってきたから私は背を向ける。またひとしきり考えたあと1590円を手に取った。揚子江でのびのび泳いでいた鰻はうまいに決まってらあ!

Aさんは今日は授業があり、そのときに学生に宿題を課す。其の採点があるから忙しい、夕食は付き合えぬ、という様子であった。しかし自分で夕食を用意する時間に我が家まで来る手だってあるではないか、と電話する。鰻と聞いて彼女も方針変更。かくして夕食は二人による鰻ごはんと相成った。

TVをつける。どこかの局のドキュメンタリー番組。「国産鰻を中国産と偽って売る!」
何?反対ではないか。昔は中国産の鰻を国産と偽って売ることがはやった。確か犯罪にまでなった。すれすれ、たとえば中国で鰻を仕入れ、それを日本の生簀に入れてから日本の鰻として出荷すると言う話も聞いた。また種類が向こうのものはフランス鰻とかいうものでずんぐりしているとも聞いた。それがまったく逆の話なのである。
放送を聞くと、鹿児島の方で死んだ鰻を中国産と表示して売っている、というのだ。スーパーで鰻一串280円などとしている。とんでもない安さである。鰻は酸素不足に成ると簡単に死んでしまうのだそうだ。それが大量発生し其の処分に困った業者がやったらしいとか。最も日本には死んだ鰻を売ってはいかん、と法律にはないらしい。
担当の男の告白:「においのでそうな鰻もウエ(上司)で加工しろ、というから加工した。」
其の業者に確認すると「食べるには問題ないから東京方面に出荷した。」
「中国産と表示したそうではないですか。これが証拠!」
「もう3ヶ月も前のこと、忙しかったからラベルを貼り間違えたのです。」としゃあしゃあとした様子。これでは中国も怒るわ!国際問題になりかねぬ!

にわかに、今、食っている鰻は大丈夫かな、と心配になってくる。Aさんも食った手前、そう非難は出来ぬが、同じ気持ちになっているに違いない。しかしこちらの鰻はにおいもなく味もよかったから、問題はないと思うのだけれど・・・・・・。
ふと友人の与太話を思い出す。「コンビニのおでんは大量に作る。おでんの大きな鍋にはゴキブリ、時には鼠も飛び込む。背中が曲がったり、目のない奇形のサカナは出荷できぬから切ってフライにし、安い弁当のおかずにする。」勘弁!勘弁!

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