ハプスブルグの宝剣      藤本 ひとみ

文芸春秋 ハードカバー

ユダヤ人ロートシルト(ロスチャイルド)の息子エリヤーフーは、ヴェネツイアで6年間学んだ後、フランクフルトに戻るが、律法をドイツ語に訳したことで、一族の敬愛をうけるラヴィと対立してしまった。さらにギュンダーローデ家の娘、アーデルハイトを争って、ヘッセン・カッセル方伯嫡男モーリッツと、ユダヤ教で禁止されている決闘をおこない、これを倒すも、カッセル伯に捕らえられ、片目を失う重傷を負った。ユダヤ教を離れて身を立てようと決意し、キリスト教に改宗する。
カッセル伯邸から救い出してくれたのはロートリンゲン君主にして、後のオーストリア女帝マリアテレサことテレーズの恋人フランツだった。その口利きで、エドウアルトと名を変え、ユダヤ人であることを秘して、オーストリア宮廷につかえる。
フランスとのネッカル河の戦いで、オイゲン公子に従軍し、戦いを勝利に導くと共に、プロイセン王太子フリードリッヒを、危機一髪で助ける。そしてハプスブルグの宝剣と呼ばれるようになる。さらに王女テレーゼとも恋におちるが、ユダヤ人であることがばれて蟄居の身となる。
カール6世崩御ののち、テレーゼが王位につくとなると、各国がオーストリアを狙いだした。エドウアルトはハンガリーを味方に引き入れ、この危機を救う。しかし、ユダヤ人を嫌うテレーザはエドウアルトを愛する一方、信用しなかった。彼女は解放したプラークのユダヤ人追放の指揮を執らせたが、その中に忘れられない父母がいたことから、彼は自分がユダヤを捨てられないことを自覚する。
ホーエンフリーデベルグの戦いで復活したフリードリッヒに破れたエドウアルトは、ユダヤ人に救われ、以後ユダヤ人のシオン帰還の夢を抱き、ふたたびテレーゼに接近。しかしカッセル伯爵夫人が復讐の機会を狙っていた・・・・・・。

・主イェズスは、実はユダヤ人なのだ。・・・・・我々ユダヤ人は、ユダヤであることを示す印を身につけねばならなくなった。ならばローマ教皇庁は、彼らが神と信ずるあのイェズスの腰布にも、ユダヤの徽章を付けさせるべきではないか。彼らのもっとも敬愛する主の上に、彼らのもっとも忌み嫌う者と同様の刻印。(上9p)
・ユダヤ人にとって、金銭は善である。それは人間を祝福する物だと、タルムードが教えているからだ。人間の三人の友は、子供、善行、そして富である。(上39p)