剣の道殺人事件    鳥羽 亮

講談社文庫

全日本学生剣道大会決勝戦は、関東の武南大と関西の京都体育大の間で行われた。
その副将戦は、武南大石川洋と京体大岸本になったが、試合途中突然石川が倒れる。
現場には10センチあまりの錐のような凶器、彼はこれでさされた、と考えられ、病院で死んでしまう。
それより1年前、武南大大将中原5段の妹陽子が、風、風、風なるダイイングメッセージを残して自殺していた。
彼女は事件の捜査に当たった大林刑事課長の甥、京介の恋人だった。
岸本が犯人ではと考えられるが、動機も殺人の方法も不明だ。
警察と京介が捜査を続けるうちに、石川洋の兄、守さらに容疑者の岸本が殺される。
実は石川守、洋、岸本は秩父の剣聖石川源一郎の異母兄弟で、源一郎は3人に異なる技術を教えた。
そして成人して勝負をさせ、勝ったものが石川家をつぐべしと告げた。その勝負がせまった頃、技術的に劣る兄の守は洋と岸本を誘い、陽子を襲ったのだった。
結局良心の呵責に悩んだ洋と岸本が敗れ、守が継ぐことになる。
しかしダイイングメッセージから3人の犯行と知った中原は彼らを次々に襲った。

衆人環視の中の密室(透明な密室)トリックが面白い。数センチの刃物を胴着の下に忍び込ませ、傷を負わせる。倒れた被害者の元にいち早く駆け寄り、犯行に使われた短い刃物を引き抜き、長い刃物にすり替える、車で病院に運ぶ途中、後部座席で別の長い刃物で被害者をめった突きにし、病院に着いたときには瀕死の状態になっているというもの。
全編を通じて剣道を愛すると言う一点がこの小説の魅力になっている。章ごとのタイトルのつけかたとそこに書かれた解説も剣道の奥義書を想起させムードを盛り上げている。


・人が剣を作り、剣が人をつくるといいます。(270p)