モルグの女      ジョナサン・ラテイマー

ハヤカワ・ポケット・ミステリー THE LADY IN THE MORGUE 佐倉 潤吾 訳

真夜中の暑さと異臭に満ちた死体置き場、そこに安ホテルで自殺した身元不明の女が収容されていた。
誰であるか確かめようと新聞記者二人と私立探偵クレインの3人が訪れ、死体あてゲームに熱中している最中、電気が消え、気がつくと女の死体が消え、その棺には代わりに番人オーガストの死体が・・・・。
クレインはコートランド家から行方不明になった娘キャスリンを捜して欲しいとの依頼を受け、身元不明の女性が彼女かも知れないと駆けつけたのだった。
しかしギャングの親分フレンチは逃げた女房かも知れない、バレッタは逃げてきておれの所に転がり込んだ女かも知れないとそれぞれクレインに死体引き渡しを要求し、脅す。
そのうちに事件に関係したと見られる葬儀屋が殺され、墓が荒らされ・・・・。
実はキャスリンはジャズ音楽家アドーニにほれて家出したのだが、財産ねらいのアドーニは妻のアンジェラを殺して、逃げ出してしまった。
しかし事実が発覚する事を恐れたアドーニはキャスリンの兄、チャンスとはかって死体を盗み出して埋葬しようとしたが、誤って番人を、そして口封じに葬儀屋も殺すことになった。
死体の女が最後まで何者かが分からないところが面白い。
全体とぼけた感じのある書きぶりで、特にクレインを中心とする酒飲み探偵団3人の会話が楽しい。

・「しかるになんぞや、余がこのささやかなる食事をなさんとしつつある際に、 余の発見せるものはなんぞや?我が信頼せる同盟者がすでにウイスキーの神に抱かれたという事実である。」 スプーンを突きつけたまま、隠し仰せぬぞとばかりに二人を見た。 「諸氏のうち一人は、今もなおこの恐るべき、悪習を形成する薬品を、 身につけて隠匿しておりものと、余は信ずるのである。」(83p)