名なし鳥飛んだ 土井行夫
文春文庫
舞台は昭和22年、大阪のすでに24年には廃校になることがきまっている澪標高校。
もともとが女子校だったところへ教室不足から男子生徒が割り当てられてきた。
主人公は新米の小谷真紀ことオタヤン先生。オタヤンのクラスに小林啓子という美貌の女性とがいた。
彼女の父親は病死したという。
9月のある日曜日、オタヤンは日直をしていたが、校長のホトケこと浮田が青酸カリを飲んで死んでいた。
見つけたのは用務員の梅本おばさん。
警察は日記に「明日がない日を迎える青い空」という遺書とも見える自由律句が書かれていたことから自殺とする。
しかしオタヤンは殺されたのではという考えをもとに調査をすると書道教師のラッコこと長門が経歴詐称を行い、ホトケがそれを見つけたらしいことを知った。
ラッコは出奔し、やがて学校前の爆弾池で水死体となって見つかる。
ついで樺島事務長の使い込みと逮捕。
社会科教師のマムシこと楢山の宿直中の死亡。
首には紐で絞めた後があった。
父が特高に殺されたという生徒会長ダンプこと大沼が、アリバイがなく警察に拘留されるが、
「すべて私の犯行だ。」
と遺書を残して梅本おばさんが首吊り自殺をしてしまう。
事件は幕を閉じ、オタヤンはこの事件で縁の出来たロクロこと丹波と結婚する。
そして30数年後、樺島が毒殺されたとのニュースが走る。
あの事件に疑問を持ち続けたオタヤンは、啓子を訪ねる。
彼女の母親は、実は昭和7年頃左翼運動をしていた男飯沼の愛人だった。
その飯沼は、仲間を裏切った浮田等のおかげで獄死した。
その話を高校時代、多感な年頃の頃聞いた啓子が、復讐したのだ。
彼女の犯行をかぎつけ、樺島は強請にきたが、返り討ちにあったのだった。
大阪風のユーモアタッチミステリー小説。
謎解きはそれほどでないが、のんびりと、どこかほのぼのとした雰囲気のある戦後の高校生活がよく描かれている。
事件を一度警察に判断させておいて、そこに疑問を持ち素人が調べ、しかも警察との連携はそのときの状況判断によるという書き方は参考になった。