偽のデユー警部     ピーター・ラヴゼイ

ハヤカワ・ミステリ文庫 THE FALSE INSPECTOR DEW 中村 保男 訳

1915年、ルシタニア号が、ドイツの魚雷の攻撃を受け、1000人以上の死者を出して沈没した。そのときどさくさに紛れて、ご婦人たちの宝石を盗もうとした男がいた。
その6年後、歯科医のウオルター・パラノーフは、パトロンの妻リデイアが突然アメリカに行き女優になりたい、と言いだし弱っていた。
花やの店員アルマ・ウエブスターは、ウオルターと恋仲だが、それならいっそリデイアをアメリカ行きの船上で殺し、二人はパラノーフ夫妻として、アメリカに行こうと提案する。
彼らが予定したモーリタニア号は、ロンドンからシェルブールを経てニューヨークに向かう予定。
他に富豪のマージョリー・コーデル、夫のリヴィ、娘のバーバラ、その恋人のポール、いかさまトランプ師のジャック・ゴードン、その妻キャザリン・マスターズ等が乗り込む。 ウオルター・パラノフは、アルマの提案で、なんとあの切り裂きジャック事件を解決し、引退したデユー警部と名乗る。 出港してまもなく彼がリデイアを処分したらしく、アルマはリデイアになりすましたが、死体が上がってしまった。
しかも死体は、リデイアのものでないことが分かった上、デユー警部と名乗ったがために、ウオルター自身、事件の捜査を船長から依頼されてしまう。
ジャックは、富豪の娘の恋人のポールに目をつけ、いかさまトランプに誘い込んだが、あがった死体がキャザリンと分かって仰天、元気をなくしてしまう。その上ジャックは、キャザリン殺しの犯人に仕立てられ・・・・。
デユー警部が救うが、その警部がジャックと一緒の時に、狙撃される。
明日はニューヨーク、と言うときになって、ようやく狙撃はジャックを狙ったもので、彼はキャザリンとルシタニア号で宝石を盗もうとした男を目撃していた、ことが分かった。
その男こそ、マージョリーの夫に収まっていたリヴィー・・・・。
しかしそのころ船にデユー警部が偽であるとの情報が入る。

全体喜劇仕立てである。人の気持ちの動きをおしゃべりみたいにしゃれを交えながらこうも生き生きと書けるものと感心。
パラグラフごとにひとつの映画のシーンになっているような味があり、会話を中心に人々の個性が次第に明らかになって行く。
スケールも大きく、非常に良くできた推理小説と思った。

最後に実はリデイアは生きていて、アメリカから戻ってきたデユー警部ことウオルターをシェルブールで迎えるところがどんでん返し。
ところでクロロフォルムを嗅がせて殺すとあるが他にこのような例があるのだろうか。