廣済堂文庫
弁護士中原の元に、公害による喘息からの救いを求める手紙を出した少女が、1週間後に自殺した。静岡県錦ヶ浦には太陽コンツエルングループが進出し、地元は潤っていたため、企業よりの官庁は容易に公害の存在すら認めようとしなかった。
しかし、西村や地元高校教師吉川、新聞記者日下部等の抗議で、重い腰をあげた官庁は、冬木教授、その弟子香取等を中心とする官製の調査団を派遣する。公害はないとの結論を出すと予想された調査団を漁民達は歓迎するが、西村等は学生と共に別の調査団を結成し、真実にせまろうとする。
そのさなか、冬木教授の水死体があがる。工場の石油タンク群が爆発する。容疑を受けて吉川が拘束され、左翼学生が入り込み、運動は先鋭化し、公害告発運動は挫折したかに見えた。しかしあきらめない中原は、教授の娘亜矢子に吉川のアリバイを立証させる一方、立身出世のみを考えて冬木教授を売った香取を告発し、太陽コンツエルン総裁の佐伯と対決する。
ドル箱のアカネエビが取れなくなって、ようやく工場排水を問題にした漁民達が立ち上がる。
公害告発推理小説としては水上勉の「海の牙」が有名だが、それに比べ、公害に苦しむ人々の現状紹介が今一歩弱く、通俗的な面白さの追求に流れている気がする。しかし、話しはテンポ良く展開されており、わかりやすく考えさせる作品になっている。
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