黄金を抱いて飛べ    高村 薫

新潮文庫

 大阪住田銀行の地下に眠る金塊6トン、このうち500キロを強奪しようと6人の男達が計画をたてた。銀行のハイテクを駆使した鉄壁の防御システムは突破可能だろうか。しかし6人にはそれぞれの事情がある。韓国人モモは、兄貴を殺した弱みを持つ爆弾製造プロ。エレベータのプロのじいちゃんは、公安のスパイかもしれない。スポンサーにして、中心になる北川とその息子春樹は、北朝鮮系の青銅社や地元暴走族住吉連合と対立している。
主人公の幸田も、住吉連合と対立している。そして何時裏切るか分からない野田のボン。
 ストーリー前半は準備と対立するグループとの対立に力点が置かれ、後半は実行プロセスに移っている。記述は非常に細かく臨場感があふれており、それなりに面白い。
 ただ、私は、犯人たちの行動目的が、どうもはっきり理解できなかった。記述が犯行の技術面に偏り、なぜ、金がほしいのか、金で何をするのか、その考え方が明確でないように思った。このような反体制グループが成立する歴史的背景、個人の過去等の説明が不十分だからなのだろうか。もっとも無目的で犯罪の実行のプロセスをスポーツの一種かなにかのように楽しみたかっただけだよ、 と言うのなら話しは別なのだが・・・・。

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