新潮文庫
1978年、アルスター。IRAのテロリストだったイアン・パトリック・モーガンはコードネーム「リヴィエラ」なる男にだまされて、中国から亡命してきた同志ウー・リャンを殺してしまう。仲間からの追求を逃れて、彼は息子ジャックを連れてを出奔するが、殺される。
ロンドンで伯父の家に預けられていたジャックは、IRAリーダーゲイル・シーモアや天才ピアニスト、シンクレアと親交を結ぶと共に、IRAの重要メンバーとして成長して行く。やがてシンクレアをあやつるダーラム侯爵とその妻にして中国側のスパイレデイ・アン等とも接触するようになる。しかし1989年、苦心して作り上げた密輸ルートを壊滅(輸送船エレノアの爆破)されてから、ジャックの信用は落ち、引退を決意する。
CIAのスパイ「伝書鳩」の手引きでアメリカにわたり、恋人ウー・リャンの娘ウー・リーアンとの平穏な生活を考えるが、交換条件に次々に人を殺し、指名手配の身となる。一方、ウー・リャンは、中国から亡命した際、当局の逮捕者リストを持ち出し、それを西側に渡そうとしたのだが、中国と波風を立てたくなかったアメリカ、および中国はこの書類の公開を阻止しようと躍起になった。
そして10数年たった後、さらにそれに担当者達の中国当局からのリベート問題も加わり、問題をいっそう複雑にする。ジャックは、真実を求めてシンクレアとの接触を試みるが、ここでもイギリス当局のウオッチャー二人を殺す。
ジャックはコード名「リヴィエラ」なる男が事件を操っていると発見。ロンドン郊外の「スリントン・ハウス」での夜会、シンクレアの東京公演とジャックの追跡は続く。しかし次々にテロが起こり、ジャックも、ダーラム侯爵も、伝書鳩も、シンクレアも過去の人となって行く。「リヴィエラ」は日本人田中宗一郎と分かるが、ジャックの親友手島修二の追求に対し「すべてがCIAの陰謀であった。」と告げる。手島は、ジャックの遺児を引き取り、アルスターの昔を思った。
記述は正確なのだろうが、裏切りに継ぐ裏切りで話しがわかりにくく、何か翻訳ものを読んでいるような感じを与える。しかし日本人作家の国際スパイ小説としては、スケールが大きく面白い。解説のところどころに作者の考え方が披瀝されている点も興味深い。
・日本の外交はパワーバランスと経済効果を計算する初歩の段階でさえ、常に躓いていると認識していました。過去の歴史の清算を怠った外交に、勝利も栄光もない、と。アメリカやイギリスの傲慢なアジア外交を笑う資格は、日本にはありません。(539p)
・文化大革命は・・・・・熱狂的な毛沢東崇拝と革命の興奮だけが遠い外国にも伝わって来る中、紅衛兵も下放運動も大衆の自発的階級闘争も、
現実にはすべて理論的な矛盾と実践の無理があったことは今日の通説になっている。
全土に広がった無秩序と混乱の中に革命は結局・・・・権力争いの結果、 10年の混乱の後に終焉した。(446p)
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