新潮文庫 福田 恒存訳
歴史劇だが、トーマス・モーアの「リチャード3世記」をベースにし、リチャード3世を徹底した悪者として描いている。「時の娘」と比較しながら読むと面白い。
薔薇戦争の後、権力を握ったヨーク家の内紛を描いたもの。リチャード3世の悪徳一代記と言った趣だが、小説では悪い奴とは魅力のあるもの、これも例外ではない。
ただ第一幕でグロスター公がアンを口説き、第四幕では王位に就いた後、エリザベスを娘をよこせと口説く。二つの事件は対応してはいるが、話としてはどうも尻切れとんぼの感を否めない。
第一幕 四場
ランカスター家のヘンリー六世が横死した後、ヨーク家のエドワード四世が国王の座についている。彼には二人の弟がいるが、末弟は、びっこでせむしのグロスター公で野心満々、ひそかに王位を狙っている。「二人の兄の、王とクラレンスの仲を割き、互いに憎みあうようにしてやろう。そして二人を消そう!」グロスターの讒言でロンドン塔に幽閉されることになったクラレンスが泣き付くと、彼はいかにも同情したふりを装う。
ヘンリー六世の葬儀ののおり、今はなきその息子エドワードの未亡人アンとグロスターが遣り合う。アンは「義父も夫もあなたが殺した!」と攻めるが、グロスターはそれを認めながら平然と口説く図々しさ。
一方、ロンドン王城内では病弱なエドワード四世の行く末をエリザベスが案じている。夫がもし死ねば、あのいやらしいグロスターが息子たちの後見人となってのさばってしまう。グロスターとエリザベスがやり合い、そこに故ヘンリー王の未亡人マーガレットも登場し、ヨーク家を呪う。
ついにグロスター公は刺客をロンドン塔に派遣、クラレンス公を暗殺する。
第二幕 四場
エドワード四世は、ヨーク家内の融和を図ろうと、ロンドン王城内で、最近ロンドン塔から釈放されたヘイステイングス卿、バッキンガム公、リヴァース卿、妃のエリザベスなどを招いて、憎しみを水に流し相和して行くよう誓わせている。そこにグロスター公がやってくるが、死刑執行停止の命令が遅れたためにクラレンス公が死刑に処せられた、と告げる。それを聞いて、エドワード四世は打撃を受けて死んでしまう。
二人の子を失ったヨーク公未亡人セシル・ネヴィルが、夫を失ったエリザベス、父を失ったクラレンス遺児とともに、それぞれの立場で悲しむ。
グロスター公は、時を移さず、バッキンガム公と図ってエリザベス一派の追い出しにかかる。
エリザベスの命令で即位する息子を呼びにやったどさくさに、エリザベス派の重臣、リヴァーズ卿、グレー卿、騎士のトーマス・ボーンをボンフレット城に幽閉してしまう。身の危険を感じたエリザベスは、聖院に次男のヨーク公と共に隠れる。
第三幕 七場
王子エドワードが戻ってくるが、王城には母も弟もいない。グロスター公は丁重に迎えるものの、すぐに聖院からヨーク公を連れ出し、明日は戴冠式と言うのに、エドワードともどもロンドン塔に送ってしまう。さらにボンフレット城のリヴァーズ公等を処刑、しかもクラレンス殺しの罪を着せてしまう。
侍従長についているヘイステイングス卿につかいをやり、誘いを入れるが「王子をさしおいてグロスター公を王にするわけにはゆかぬ。」と拒否される。彼はエリザベスの反対派で、リヴァーズが殺された時祝杯をあげたものだが、自分もまた処刑されてしまう。グロスター公は、議会に使者を送り、王子エドワードやヨーク公が庶子であり、王にふさわしくないとの噂を振りまく。彼は、バッキンガム公と市長に懇請させて、王位につくことを承諾する。
第四幕 五場
聖院のエリザベス、ヨーク公未亡人等が、ロンドン塔の王子たちを訪ねるが、面会すら許されない。一方ロンドン王城内では即位したグロスター公ことリチャード王が、バッキンガム公に王子たちを殺せと指示する。公は躊躇し、しかも恩賞の領土を要求するが、王は相手にしない。王は自分で刺客を選んで差し向け、殺してしまう。
バッキンガム公やランカスター系のリッチモンドがリチャードに反旗を翻した。ロンドン王城内ではマーガレットが未来を呪う中、リチャード王がエリザベスに娘のエリザベスと結婚させろと無理を言う。ついにエリザベスが口説き落とされ、王は「この変わり易い女」とつぶやく。次々に届く反旗の報、しかし反乱軍も一様にうまく行くわけではなく、バッキンガム公は戦い利あらず、とらわれに身となる。
第五幕 五場
バッキンガム公は刑場の露と消える。リッチモンド軍の数は少ないが精鋭ぞろい、対するリチャード王側は数では優位だがノーフォーク公、息子を人質にとってあるスタンレー公などいつ寝返るか分からぬ連中が多い。エドワード、ヘンリー六世、幼い王子等の亡霊が現れ、リチャードを悩ませる。
戦いの火蓋が切られた。リチャード軍はリチャード王が獅子奮迅の働きをするものの敗戦。ついに王は殺されてしまう。リッチモンドが勝利を祝い、ヨーク・ランカスター両家が一つになるよう祈って幕。
R010219