新潮文庫 Romeo and Juliet 中野 好夫訳
シェイクスピアは、観客を出だしからその劇の雰囲気にひきずりこむために、作品ごとに工夫を凝らしている。たとえば「ハムレット」の場合は亡霊、「マクベス」の場合は魔女の台詞に事件の発端と成り行きを暗示させている。「ロミオとジュリエット」の場合は序詞役が登場する。
「舞台も花のヴェロナにて、いずれ劣らぬ名門の、両家にからむ宿怨を、今また新たに不祥沙汰……・仔細はここに、二時を、足らわぬ節は大車輪、勤めますれば、御清覧、伏して願い奉る」
第一幕 五場
ヴェロナの広場でキャピュレット家の召し使いとモンタギュー家の召し使いが悪口を言い合い、モンタギュー家のベンヴォーリオ、キャピュレット家のテイボルの息子ロミオが登場、
ベンヴォーリオにロザラインとの恋の話などして多情な様子をみせる。
キャピュレット家では青年貴族パリスがキャピュレットに娘のジュリエットをほしいと申し込むが、まだ十四歳、世間を知らぬとやんわり断られる。しかし乳母やキャピレット夫人はジュリエット説得にかかっている。
一方で恒例の宴会を開く準備に大童である。その通知がひょんな事でロミオの手に入る。ロミオは太守の友人マキューシオと語ってお忍びで宴会にでることを決心。ロミオは宴会で、美人発見、早速巡礼と称してアプローチし、二度までくちづけ。後にジュリエットと分かり、ジュリエットもまたロミオと知る。しかし一度ついた恋の炎は消えない。
第二幕 六場
ロミオが聞き耳を立てる中、マキューシオとベンヴォーリオがロミオとロザラインの恋の話に興じている。しかしロミオが駆けつけたのは夜の月明かりのキャピュレット家庭園。ジュリエットが二階舞台に現れ、互いに切ない胸のうちを歌う。最初はお互い相手を認識しなかったが、次第に意中の人と分かり、後は恋の歌。乳母によばれ、ジュリエットは再び現れ、互いに求愛する。
ロミオは僧ロレンスのもとに赴き、ジュリエットと結婚させてくれと申し込む。ロレンスは悩むが「両家の怨恨を、心からの親しみに変える幸運にならぬとも限らぬ」と同意する。マキューシオとベンヴォーリオがからかう中、ロミオが乳母に会い、ジュリエットに修道院に来るよう伝えてほしいと頼む。ついに二人が僧ロレンスのもとで結婚。
第三幕 五場
ヴェロナの路上でマキューシオとベンヴォーリオがキャピュレット夫人の甥のテイボルトと路上で喧嘩、マキューシオが殺されてしまう。これを見たロミオがテイボルトを殺すが、殺人犯になってしまう。太守が登場し、事件の真相を知りロミオに即刻ヴェロナ立ち退きを命じる。
ジュリエットは乳母から事実を知らされて嘆き、指輪を乳母に託してロミオに贈る。一方ロミオは今ヴェロナを立ち退くことは死ぬより辛い、とだだっこのように僧ロレンスに嘆くがどうしようもない。一方、キャピュレット家では、キャピュレットが強引に娘にパリスとの結婚を薦める。しかしその夜もロミオが現れ、愛をささやく。
第四幕 五場
僧ロレンスの庵室をパリスとジュリエットが訪問。パリスの求愛をジュリエットはぬらりくらりと交わす。明後日に結婚式とあって、ジュリエットは困っていた。とうとう彼女の懇望により、僧ロレンスは仮死状態になる薬を与える。これでパリスとの結婚は御破算になり、墓場に運ばれるだろう、しかし42時間後には生き返る、マンチュアに逃れたロミオには事情を説明しておくと話す。
その夜、一人になったジュリエットはとうとう薬を飲んだ。屋敷の中はまだ結婚式の準備で忙しい。しかし突然死体となったジュリエットが発見され、悲しみのうちに墓場に運ばれる。
第五幕 四場
マンチュアではロミオがバルサザーからジュリエットが亡くなり、墓場に運ばれたと聞いて仰天、この上は彼女と死のうと薬屋で毒薬を買い、墓場に駆けつける。僧ロレンスはマンチュアにやった僧が事故でロミオに会えず、手紙を渡せなかったと聞いて仰天する。墓場に駆けつけたロミオはパリスと遭遇。パリスはロミオの剣に倒れ、ロミオもジュリエットの死体を見て毒をあおる。
目を覚ましたジュリエットが二人を発見、ロミオの短剣で我が胸を刺し貫く。僧ロレンスや両家の人々が駆けつけたときには死体の山だった。説明を受けた太守の助言により、両家は悲しみの中に和解を誓い合う。
この作品は私はなにか高級な悲恋物語みたいに考えていた。
しかしロミオのジュリエットへの恋はロザラインからののりかえ、雰囲気から大したまじめな人間にも見えない、それがそんなにジュリエットに血道を揚げるのは不自然に見えるし、純粋かどうかもあやしいもの、まして後追い自殺など良くできたものだ。まさに不良男女一代記!
この作品は悲劇に数えられている。確かに主人公がみんな死ぬんだから、そうかも知れないが、各人の行動は誤解と愚かしい判断が入り交じり、ドタバタ喜劇の様にも見える。
それにしても僧ロレンスの与える毒物は何と素晴らしい。こんな物があったら本当に便利!
「飲めばたちまち血管中を冷たい、眠いものがかけめぐり、平常の脈拍も動かなくなって、止まってしまう。体温もない、呼吸もない、生きた兆しは少しもない。…・仮死の状態が42時間続くとまるで快い眠りからでも覚めるように、自然に蘇る。」(165p)
ハムレットが買った毒薬も素晴らしい。
「好きな飲み物に一滴たらりとたらし、一口で飲めば、即座に往生はテキメン。」(192p)
主人公二人の恋愛詩が美しいという。ただ訳者が嘆いているように原作の詩の移植は絶望的なのかその良さが今一歩伝わってこない。
R010221