ワイルド・スワン       ユン・チアン

日中戦争から、文化大革命、4人組までを一庶民の立場から描いた祖先と自分の歴史。豊富な歴史資料に基づいた丁寧で平易な記述と、10年イギリスに暮らした結果得られた客観的な者の見方が強みである。この歴史的過程をふまえた上で現在の中国があるのだと言うことを認識する必要があり、その意味で私には良い勉強になった。

・不平不満が一言も出ないときこそ抑圧が一番ひどいのだという事が、どうしてこの外国人には分からないのだろう。犠牲者が笑顔を作っているときこそまさに抑圧が頂点に達していることが、どうして分からないのか。(下、324p)
・主義主張もいらないただ平穏な人生、なんの取り柄がなくても自分だけの人生をいきられれば、それだけでいい・・・・そう思った。(下、338p)
王招君にとっては、凶奴王の妻になった方が幸せな人生だったんじゃないかしら。少なくとも、毎日草原が見られる。駿馬も見られる。大自然にふれることが出来る。皇帝の後宮は、贅沢な牢獄と同じだ。まともな樹木一本植わってはいない。(下342p)
・毛の思想の本質は、いったい何だったんだろう?。毛沢東思想の中心にあったのは、果てしない闘争を必要とする論理だったと思う。人と人との闘争こそが歴史を前進させる力であり、歴史を創造するには大量の「階級敵人」を製造し続けなければならない・・・・
毛沢東の思想は、あるいは人格の延長だったのかも知れない。私の見るところ、毛沢東は生来争いを好む性格で、しかも争いを大きくあおる才能に長けていた。嫉妬や怨恨といった人間の醜悪な本性を実に巧みに把握し、自分の目的にあわせて利用する術を心得ていた。
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毛沢東のもう一つの特徴は、無知の礼賛だ。毛沢東は、中国社会の大勢をしめる無学文盲の民にとって一握りの知識階級が格好の餌食になることを、ちゃんと計算していた。・・・・また誇大妄想狂で、中国文明を築きあげた古今の優れた才能を蔑視していた。・・・・自分に理解出来ない分野には、まるっきり価値を認めなかった。(下、360p)