文芸春秋社 ハードカバー
18世紀末、抑圧されていた民衆が、立ち上がり、一触即発のパリ。そこには我がオーストリアから輿入れしたルイ16世后マリー・アントワネットがいる。民衆の不満は、世界情勢も家の立場も無視した彼女の自己本位なやり方に向けられている、とあって、ヨーゼフ2世は彼女の幼なじみルーカスを派遣する。
バステイーユ襲撃のあと、王家はヴェルサイユに避難していたが、マリー・アントワネットとその意のままに動くルイ16世は、時代の流れがつかめず、旧体制に依存しようとしていた。そんな彼らを、ルーカスは、説得し、民衆の要求する王権の制限とパリ帰還を実現させると共に、ラファイエットを指示し、立憲君主制を打ち立てようと暗躍する。さらにミラボーやバルナーブが力をつけると、彼らを互いに競わせて、王家の温存を図ろうとする。
しかし、スウエーデン貴族フェルゼンとの恋に盲目になった王女は、国王ともども国外脱出を希望し始める。そして王女は、ヨーゼフ2世に彼らを受け入れる様、要請する手紙をルーカスに持たせる。しかし、ルーカスはそれを紛失し、口頭でヨーゼフ2世に伝えるものの、色好い返事は得られない。
王女は、パリでの外出もままならぬ不自由な生活を過ごすうち、フランスを憎み始める。ルイ16世は聖職者民事基本法でローマ教皇と民衆の間で苦しむ。また議会では選挙制限法の撤廃は阻止されたものの、急進派のロベスピエール等の力が増大していた。ますます居心地の悪くなった国王一家は、パリ脱出をひそかに決定する。パリの危機を知ったウイーンからは、ルーカスに帰国の命令が下る・・・・・・。
以上があらすじであるが、この後脱出した国王一家は、ヴァレンヌで発見されパリに連れ戻される。以後、王家は幽閉され、断頭台を待つ身となる話しはよく知られている。ルーカスの活躍をのぞけば、ほぼ史実にそった話しの様だ。フランス革命のおおきな流れの中で、各人がそれぞれの思惑から行動し、その総和として結果が作り上げられて行くところが面白く、現代の政治にも通じる点がある。
・大体議会とはなんでしょうか。国民の集まりではありませんか。国民とは、王の下に服従すべき者のことですよ。国王の威厳をお見せなさいませ。(110p)
・(ルイ16世の国外脱出の意思を聞き)誰かに動かされているなら、打つ手はある。だが自分の気質と存在意義に引きずられているのでは、どうすることもできなかった。(299p)
・(ロベスピエール、選挙制限法について)貧しい者も、財産を持っている・・・・それは、自らの自由、そして自らの生命だ。財産を基準に市民権を与えるというのなら、人間の持つもっとも尊いこれらの財産に対して、それを与えよ。(347p)
・なぜなら貴族という者は、国王を守護するために形成された者だからだ。自らの責任を果たさない貴族は、自己の存在意義を放棄するものだ。(370p)
・(マリー・アントワネット)恐怖と屈辱によって私を傷つけたこの国の人民には、私と同じ思いを味わって貰わねばなりません。(391p)