四人の女           パット・マガー


創元推理文庫  ...FOLLOW,AS THE NIGHT....  吉野 美恵子 訳

今をときめく人気コラムニストラリーは、底辺からはい上がり、マスコミ界の寵児となった。
彼には、前妻、妻、フィアンセ、愛人の4人の女がいたが、ある時この4人を自室ビルの14階でのデイナーパーテイに招待した。しかしパーテイの直前、屋上を散歩した前妻シャノンは、フェンスに細工がしてあり、ラリーが4人のうちの誰かを殺そうとしていることを突き止める。シャノンが、はらはら見守る中、皮肉とあてこすりの応酬の中でパーテイは進み、4人とラリーの関係が過去にさかのぼって次第に明らかになってくる。
シャノンは駆け出しのころの妻、ラリーが金を受け取ってコラムの内容に手心を加えたり、競争相手の悪口を書いたりするのをやめさせようとし、ラリーの父の死に際しては、過去を見たがらないラリーに母を訪問させ、母の死に際しても見舞いに行かせようとする。しかしそれが煙たいラリーとついに分かれることになった。
今の妻クレアは、シャノンと分かれた反動で一緒になった他人の女で、勝ち気なだけでラリーの能力を理解出来ない女、彼女はラリーが分かれてデイーと結婚するというと、愛人と相談し、莫大な慰謝料を要求してきた。
愛人のマギーは、ブスだが画家で、仕事上で絶妙のコンビを組んでいる。デイーと結婚するというと、コンビを解消すればあなたの名声はたちどころに地に落ちるが良いか、と脅す。
フィアンセの父は雑誌社の大物で、是非味方に引き入れて起きたい。ところが彼女は逆手に取ってほかの男との間に子供が出来たから結婚してくれ、拒否すればあなたのコラムニスト生命はおしまい、と脅す。
パーテイは参加者が次々と帰って行き、残ったのはラリーとシャノン。するとあの人が殺したかったのは私、でも、一体なぜ・・・・。シャノンには分からない。そういうシャノンをラリーは屋上に誘い、別れのキスをした後、自分自身がフェンスを突き破って落ちて行く。

4人とラリーの考え方、心の動き非常によく描かれており、それぞれが自分の利益を守ろうとしながら、決して完全な悪人たりえないところがよい。しかし、このラリーの気持ち、若い野心的な男には必ずある話・・・・そしてその行く先も・・・。ある意味では身につまされる話である。それからシャノンの考えはそのときは得にならないかもしれないが、人間として大切なことだと思う。

・人は君を区別することを学ぶべきだよ。・・・・要するに彼は小物だ。時間を割いてやるのはもったいないよ。(142p)
・私がいやだと思うのは、あなたがあなた自身じゃなくなることなの。外に出ると、あなた、人が変わってしまうのよ。人を感心させよう、偉く見せかけよう、自分が何者かをありとあらゆる人に知らせようとして、夢中になってしまうんだわ。(156p)
・貧民街出身という背景の恥ずべき点はただ一つ、貧しい人々を拒絶することにあるだけなのだと。(227p)
・あなたは自分の周囲に自尊心の固い殻を気づき、称賛と名声で養い育てて、それがあなたの生活実態を形作っていくのに任せていたのよ。今その殻が突き崩されて、当然のことだけどあなたは呆然としている。(319p)
・だから、あまり早くゴールに達すると厄介なんだよ。・・・三十歳で成功者になってしまうと、考える時間、自分の人生の決算報告書を作る時間がありすぎるんだ。・・・・なまじ成功を収めたばかりに、今更新たなゴールを定めて振り出しからやり直すこともできない。(320p)