ハヤカワ・ポケット・ミステリー FIVE LITTLE PIGS 桑原 千恵子 訳
「クリステイの作品の面白さはトリックにある」と言われているけれど、その意味を考えてみると、トリックを解く醍醐味とその過程で描き出される人間性にあるように思う。この作品もその例に漏れない。
「16年前、母親のカロリンが、夫アミアスに斑毒人参を主成分とするコニイン入りビールを飲ませ、殺害し、処刑された。私は孤児となったが、今度結婚する事になった。結婚を成功させる為に、事件の真相を知りたい。」と成人した娘のカーラが、ポアロに依頼するところから始まる。当然読者は「いまさらどうして真実がわかる?分かったところでどうなる?」と考えるが、そこをポアロがうまく解決してゆくのだから面白い。
五匹の子豚と言うのは五人の容疑者の事、アミアスの親友フィリップ、その兄メレデイス、アミアスの愛人エルサ、カロリンの妹のアンジェラ、アンジェラの家庭教師セシリアである。
アミアスは有名な画家で、優れた絵を描く事を一番大切と考えていたが、ある時エルサの肖像画を描く。やがて愛人関係に陥り、エルサはカロリンを追い出して自分が妻になるのが当然、といった発言をする。そんな時エルサを描きながら、妻カロリンの用意したビールを飲んだアミアスが「いやな臭いがする。」といい、しばらくして一人になってから倒れて死んでしまった。前日メレデイスが、皆に収集した毒を見せており、コニイン入りのものが空になっていたことなどから、カロリンが逮捕される。しかもカロリンは「そんなことはしませんわ。」」というのみで反論せず、死んでしまったというもの。
ポアロは五人に会い、その当時の事件の経過を書類に書かせるのだが、皆少しずつ事実を曲げて書く。そこを突き崩しながら、なぜ、カロリンが裁判であのような行動を取ったかを検討して行く。カロリンは、実は夫から「エルサとは終わった。絵が終わるまで愛しているように見せかけているのさ。」と聞く。彼女は「それはひどい。!」となじり、自殺しようとコニインを盗みだした。ところが立ち聞きで自分は捨てられると知ったエルサは、怒ってそのコニインをまた盗みだし、ビールに混ぜて飲ませ、アミアスを殺した後、憎いカロリンに罪を着せようとした。一方カロリンは、昔妹のアンジェラに文鎮を投げつけて不具にさせてしまった事を心の負担に感じていた。そして今回の事件は、アンジェラの犯行に違いないと確信し、一方で生涯をかけて愛していた夫が死んだのだからもうどうでもよい、という気持ちで行動した、と言うのである。
最後に真相を突きつけられ、エルサが「あの二人は天国へ逃げていってしまった。殺されたのはこの私です。」と発言するところも逆説的で面白いエンデイングだ。カロリンを愛しているように見えたフィリップが、実は冷たく振られていた、のろまで馬鹿に見えたメレデイスが、一番カロリンを愛していた、冷たいだけに見えた家庭教師が、実は優秀で真実を語っていたなど人の行動の分析が参考になる。また立ち聞きした結果が思わぬ誤解を生む、いたずら好きなアンジェラがまたたびをビールに入れた結果、誤解を招く、ジャスミンの香りがしたところから、ジャスミン入りの瓶を利用した点を見破るなどのテクニックも縦横に駆使されており優れた作品と思った。
・「男って分からない物ですわねえ。」・・・・「わたしは教養のない野生的な女のように、おのでもふるってあの娘と戦いたいような気になります。」(162p)
(サユリの意見)「事件の起こった当時、娘のカーラは4,5歳だったはず。そんな女の子のいる家庭では子供中心に動いているはず。その記述が少ないのはおかしいと思う。それから、これもあのマザーグースの歌からとっているのよ。」
FIVE TOES
This 1lttle pig went to market;
This little pig stayed at home;
This little pig had roast beef;
This 1lttle plg had none;
Thrs lrttle plg sald "Wee, wee! I can't find my way home."
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