八百万人の死にざま    ローレンス・ブロック


ハヤカワ・ミステリ文庫 EIGHT MILLION WAYS TO DIE 田口俊樹 訳

アル中の探偵マシュウ・スカダーは、キムというコールガールから足を洗いたいので、ヒモのチャンスと話しをつけてくれと頼まれる。
話しは円満に進み、問題なくすんだように見えたが、直後、彼女はホテルで鉈で滅茶苦茶に切られて死んで発見された。
マシュウは、チャンスから真犯人探しを依頼される。
聞き込みを進め、キムにはボーイフレンドがいたらしい、その男と暮らすためにチャンスと手を切ったらしい事が次第に分かってくる。
そんな中、チャンスの別のコールガールソーニャが首吊り自殺を遂げる。
オカマの街娼クッキーがキムと同じようなやり方で殺される。
ホテルの客室係りが姿を消す。
麻薬とアルコールが蔓延するニューヨーク、そこでは毎日犯罪が起こり、殺人は日常茶飯事、八百万人は様々な死に様を見せる。
特に裏切れば関係者すべてを殺す麻薬組織コロンビア人たちの復讐はすごい。
マシュウはAAの集会に出席し、アルコール中毒と懸命に戦いながら事件を追跡するが、犯人像が特定できず、ついに警察と協力して罠を張ることにする。
しかし、今日は何もおこらぬとホテルの部屋に戻ったところ、突然、隠れていた男が鉈で襲ってきた。
キムのボーイフレンドがコロンビア人の宝石取り扱い関係者で、彼が組織を裏切ったのだ。
連中から見ればキムもクッキーも関係者だったのだ。・・・・・

短いセンテンスで、人々が簡単に殺されて行く、ニューヨークの状態が、一種のセンチメンタリズムをもって描かれている作品。
サインを活字体で書き、金をキャッシュで払ったにもかかわらず、客室係が覚えていない点に不信を抱く点が興味深い。
また、チャンスが税金を払う代わりに入った金の10%を教会に寄付するところは文化の違いだろうか。

・あらゆる犯罪がこの市じゃ増加しているのさ。家に帰る途中、辻強盗に襲われて有り金を全部盗られたとする。今やそれが犯罪といえるかね?みんな命が助かったことを感謝するのさ。(172P)
・ここはまさにジャングルだよ。あらゆる獣が武装したジャングルだよ。誰もが銃を持っている・・・・善良な市民は自分を守るために銃を持たなきゃいかん。(174p)
・国中が金に困っているのがいけないのさ。くそったれのサウジアラビアかなんかに金が集まってるのがいけないのさ。アラブのくそったれどもがラクダをキャデイラックに変えている間に、この国はどんどん貧しくなっちまったのさ。(176p)
・これから奴らをサイコって呼ばないんだよ。EDP(情緒障害者)ってよぶのさ。(181p)
・死刑制度は今もあるって事さ。と言ってもそれは殺人犯のためのものじゃない。一般市民のためのさ。(186p)
・「裸の町には八百万の物語があります。これはその一つに過ぎないのです。」(187p)
・市が私たちの友達や隣人を殺している間はそっぽを向いているんです。(247p)
・僕だってそういう記事を見るときがめいる。世界情勢の記事なんかを読んでもね。・・・・・・新聞を読まなきゃならない法律なんてどこにもない。(265p)