新潮文庫 813(1)LA DOUBLE VIE D'ALSENE LUPIN 堀口 大学 訳
ダイヤモンド王ルドルフ・ケッセルバックは、全ヨーロッパの運命を左右するほどの秘密を握っているという。彼は、今ここにそれを暴露すべくパレスホテルに宿泊していた。ところが何者かに襲われ、秘書のチャップマン、召し使いのブドと共に惨殺されてしまった。
殺害現場には、アルセーヌ・ルパンの名刺、小さなレッテルに813の文字、L.M.の文字。事態を重く見た総理大臣パラングレーは、ル・ノルマン警視庁保安課課長にルパン逮捕を命じる。しかし、ル・ノルマンは、ルパンは決して人を殺さないと力説する一方、真犯人逮捕を誓う。
一方、ルパンことセルニーヌ公爵は、ジュヌビエーブ・エルヌモンという美しい娘に愛情を示す一方、警視庁に潜入させていた部下のドービル兄弟からケッセルバック事件の概要を調べていた。
その上ジェラール・ポープレなる貧乏詩人が気に入り、貴族ピエール・ルデイックに仕立てあげ、将来は娘のジュヌビエーヌと結婚させ、つぶれたベルデンツ公国なるものを復活させよう、と夢見ている。
ル・ノルマンは、グーレルと共に真犯人らしいアルテンハイム男爵を中心とする一団を追うが、逆に捕らえられ、袋詰めにされ、セーヌ河に投げ込まれてしまう。さらに一味は、ジュヌビエーヌと813の秘密を知る唯一の老人スタインウエッグを誘拐、秘密の場所に監禁してしまう。
そしてアルテンハイム男爵とルパンが対決する。ルパンが勝ち、男爵は最後の時をむかえ、老人の監禁場所を白状する。
しかし、そこにかけつけたウエーベル警視庁保安課次長は、ルパンを逮捕すると共に、いまはの男爵からとんでもないことを聞き出す。
「セルリーヌ公爵はルパンにしてル・ノルマン・・・。」
ル・ノルマンは、死んではいなかったのだ。
以下、続編へ。
新潮文庫 813(2)LES TROIS CRIMES D'ALSENE LUPIN 堀口 大学 訳
ルパンを捕らえさせたのは、あのL.M.なるものに違いない。ルパンは、刑務所から部下に数々の指令を送るが、次々にL.M.なるものに破られるてしまう。しかし秘密書類が必ずあると警察陣をだまし、殺害犯を捕えるべく単独でベルデンツの廃墟に向かう。そして813の秘密を解き、柱時計の中の小箱を発見するが、書類は持ち去られた後だった。
手がかりを握る唖の少女イジルダも殺されてしまう。
一味の巣窟をようやく探し当てたルパンは、彼らがケッセルバック夫人を襲う計画を知り、待ち伏せる。そしてついに7人を逮捕、追って首領のレオン・マシエも逮捕する。
戸籍からルパンは、ドイツの狂人の血が流れるマルライヒ3兄妹を発見、彼らはケッセルバック公爵殺害など悪事を重ねたが仲間割れ。ルイ・ド・マルライヒが最期に兄のアルテンハイム公爵ことラウール・ド・マルライヒ、妹のイジルダを殺害したものと知った。そして意識的にルパンに7人を逮捕させた・・・・。
しかしレオン・マシエは、自分がルイ・ド・マルライヒであることを認めようとしなかった。それでも事件は一応解決し、ルパンは実はルパンの娘、ジュヌビエーヌと詩人ピエール・ルデユックを結婚させ、ベルデンツ大公国を復活させようとはかるが、ピエールにほのかに思慕をよせるケッセルバック夫人との情事を発見。
さらに夜誰かが彼を襲う気配に気づく。やはりL.M.はレオン・マシエとは別人か、と待ち受け、捕らえてみると、なんとケッセルバック夫人その人。彼女はマルライヒ家の長女だったが、血に狂った女性。ルイ・ド・マルライヒになりおおせ、悪事を重ねていたのだった。
最期に書類を取り返し、ドイツ皇帝シャルルマーニュに変換した後、彼は、フランス人であるが故に申し出された役職を断り、引退の道を選ぶ。
面白いという事を第一の主眼において書かれたこの小説は、波瀾万丈、活劇あり、ロマンあり、トリックも推理も一級で作者の頭の良さを感じる。また最期にルパンがフランス人としての誇りのようなものを見せるところも、作者の国で受ける理由なのだろう。しかし誰にでも変装でき、あらゆる組織に潜り込め、腕力は抜群、単純明快という想定、心理描写などより活劇という書きぶりは本格推理小説という枠からははずれている。西洋風の怪傑ナントカ頭巾とか鞍馬天狗だ、と思えば大体のところは間違いない。
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