赤毛のレドメイン家     イーデン・フィルポッツ

創元推理文庫 THE RED REDMAYNES 宇野 利泰 訳

 ロンドン警視庁探偵のマーク・ブレンドンは、ダートムーアで休暇を楽しんでいたが、貿易商社主の息子マイクル・ベンデイーンが叔父のロバート・レドメインに殺されたらしい事件が持ち上がり、捜査に乗り出す。「らしい」と書いたのは状況証拠は揃っているものの、死体も殺人者も消えたからだ。そしてロバートらしい男の影の出現。
 マイクルの美貌の妻ジェニーは、別の叔父ベンデイゴ・レドメインの元に身を寄せるが、そこに新しく雇われたジウゼッペ・ドリアとブレンドンに慕われた様に見えた。そして再度のロバートらしい男の出現と一人呼び出された叔父の消失。
 事件は未解決のまま1年がすぎ、ブレンドンはジェニーとドリアの結婚を知らされる。二人はコモ湖畔に住む第三の叔父アルバート・レドメインのもとに身を寄せていたが、またもロバートの影。今度は、ブレンドンに加えてアメリカの引退した探偵ピーター・ガンズが登場する。ガンズはブレンドンに「先入観を持って捜査に当たったことが間違いだ。アルバートの身には危険が迫っている。」と忠告する。
 そしてロバートの相棒がドリアらしいと分かって網をあったとき、巧みな誘いで呼び出されたアルバート叔父が消える。

 殺人犯は復讐をかさね、レドメイン家の財産を乗っ取ろうとしたのだった。ロバートを殺し、その上顔を知られていないのをいいことに、ドリアになりすまし、ベンデイゴ叔父、アルバート叔父のところに現れた。もちろんロバートの影も、犯人自身が作り出したもの。

・「・・・・二プラス一は、三以外にならないと」
「ところが二プラス一は二十一になるんですぞ。十二になるかも知れないし、二分の一になる場合だってある。」(235p)
・「人間の知恵が、それ自身の規定する理想に到達する事は不可能である。仮に到達したにしても、さらに又、それを越えての理想を指示すれであろうから(モンテーニュ)」(255p)
・殺人ほど得るところの多い偉大な経験はない。科学、哲学、宗教、そのどれをとろうとも、秘密、冒険、殺人の勝利に比すべきほどのものはないのである。(395p)
・全能の神が我々人間のどのような行為を喜ぶかは、少なくとも現在の段階では、人智のあきらかにするところではない。・・・・・神は虎を、草を食む様には作らなかった。神は鷲を蜂蜜によって生きよとは定めなかった。(420p)
・義眼に仕込まれた毒薬カプセル(429p)

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