創元推理文庫 THE RED WIDOW MURDERS 宇野 利泰 訳
マイクル・テアレン博士は、アンストライザー卿の誘いで、ロンドン・メイフェア近くのマントリング家の屋敷で行われた風変わりな夜会に参加する。食堂の奥には赤後家の間と呼ばれる開かずの間、フランス革命以来、不思議に部屋に一人で入ったものは死亡している。歴史を訪ねるとその部屋の家具は歴代絞刑吏の名家にあった家具を持ちだしたもの。
パーテイで、カードで最高点を引いたマントリング卿の娘ジュデイスの婚約者(アーノルド)の友人、ラルフ・ベンダーが、2時間その部屋で過ごすことになるが、声がしていたにも関わらず、死んでしまった。
H.Mことヘンリー・メリヴェール郷と一緒に来たマスターズ主任警部は、クラーレを塗った吹き矢を窓の隙間から打ち込んだ、卿の弟のガイが犯人、とするが死体に載っていた羊皮紙の説明がつかない。
そしてガイ自身が惨殺される。
ここにいたって、H.M.は赤後家の間にあった小箱のそこの宝石と椅子の仕掛けを暴き出し、歴代死んだものは椅子の中に隠されていた宝石を盗ろうとして、仕掛けたバネで殺された、しかしその装置は、数年前に家具屋に頼んで除去したことを暴露する。
ここにいたり、殺人捜査は行き詰まってしまった。伯母イザベルが、マトリング卿の机の中で血の付いたナイフやなくなったノートを見たと証言。一時は卿自身が逮捕されるがH.Mは彼が犯人とは信じない。誰かがイザベル伯母を使って、卿に罪をかぶせようとしている。
密室殺人を再考、ベンダーが歯の治療をした直後で、アーノルドは精神科医で5年もこの家に出入りしていた点に着目。アーノルドが痛み止めと称し、ベンダーにクラーレ入りのブランデーを持たせ、彼の死が発見されるといち早く駆けつけ、証拠のノートを抜き取ったが、同時に羊皮紙を落とした、と判断。
彼の犯行目的は財産奪取で、ガイ殺害にあり、ベンダー殺害は捜査の混乱をねらったものだった。
密室殺人として非常に面白い。ばねに祖先は仕掛けられた毒、第一の殺人に対する最初のアイデアは吹き矢、そして真実は歯の傷から入ったクラーレ毒、証拠は犯人が一番最初に駆けつけて取ってしまうというのだから、凝っている。しかもそれが第二の殺人をカモフラージュするためというのだからおそれいる。
絞刑吏がギロチンにかけられた貴族たちから宝石類を取る話し、逃げ出した曾孫一家を殺すために細工をした家具を贈ったばあさんの話し、部屋に入ったものが次々死んで行くが、実はみんなそこにある宝を独占しようと入ったのだと言う話し、いづれもが面白く、カーの代表作としてふさわしいものと言えよう。
・クラーレは痙攣誘起剤として使われる。飲んでも無毒だが、皮下注射で猛毒(110P) ・チェリーブランデーは青酸カリのアーモンド臭を消すのに役立つ。(334P)
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