赤い拇指紋          オースチン・フリーマン

創元推理文庫  THE RED THUMB MARK 吉野 美恵子 訳

ジョン・ホーンビーの経営するロンドンの貴金属会社で夜間、金庫からダイヤモンドの盗難事件が起こった。
ジョンにはルーベンとウオルターの二人の甥がいたが、現場に落ちていた紙にはルーベンの指紋がくっきりと残されていた。
果たしてルーベンの犯行か。
法医学の権威ソーンダイク博士が助手のポルトン、友人のジャービスと共に登場。
博士は現場の指紋が実際の指紋を写真に撮り、複製スタンプを作り、押した物であること、血液は固まらないようにフィブリンの除去をしたものであることを見破る。
犯人はウオルターでルーベンに陥れようとしたものだった。
法廷での偽指紋の実験的な証明が圧巻だが、途中で博士が毒入り葉巻や銃から発射された動物用注射針で襲われるところも魅力である。
偽指紋については和久竣三「雨月荘殺人事件」、土屋隆夫「赤の組曲」等があり、読み比べると面白い。


・有罪確定までは無罪と見なす・・・・「無罪の推定」は完全な虚偽だということ、被疑者は逮捕の瞬間からすでに罪人扱いされるのが実状だという事だよ。(99p)
・獣医が使う極太の注射針・・・ポンプ式の強力な空気銃から発射・・・・銃身の内側に螺旋状の溝(165p)
・葉巻・・・末端の葉の燃焼によって生じる蒸気が葉巻の寄り冷たい部分で液化して毒物を溶かし、こうして溶液が口中に吸い込まれる・・・(193p)
・血が紙の上で澄んだ赤い液に見えることはあり得ない・・・・攪拌あるいはアルカリ性塩類処理による血液凝固の防止(241p)
・指紋偽造・・・1、指頭の型そのものを粘土や封蝋に取り、 ゼラチン溶液を入れて雌型を取る。2、本物の指紋の写真を撮り、 白黒反転原板を作り、重クロム酸カリで処理したゼラチン板と共にこのネガを特別製の焼き枠に入れて光を当てる。 クロームゼラチンは光にあてると熱湯で溶解しなくなってしまう性質があり、これで版が作れる(261p)