赤い館の秘密         A.A.ミルン

創元推理文庫  THE RED HOUSE MYSTERY  大西 ただ明

厚い夏の昼下がり、一発の銃声がなりひびき、赤い館を15年ぶりに訪れたオーストラリア帰りの兄ロバートが殺された。
そして弟で館の主人のマークは姿を消した。
館の客ギリンガムが庭か探偵になり、同じ客のベヴリーをワトソン役に仕立てて謎の解明に挑む。
館の管理人でマークのいとこのケイリーが何らかの意図を持っているらしい。
やがて壁に映った影から、事件直後、ケイリーが犯人が逃げ出したと見せる工作をしていたことを見つける。
さらに書斎から庭にある別の小屋にぬける抜け穴を見つける。
警察は凶器を求めてケイリーの助言で庭の池をさらうが何も見つからない。
ケイリーがマークを殺し、死体をさらった後の池に捨てるに違いない、と考えたギリンガムだが、捨てられたのはマークの衣服だけだった。
しかしケイリーが素人役者であることを発見したギリンガムは、ついに推理の輪をつなげることが出来た。
ロバートはとっくの昔に死んでいた。
マークはオーストラリア帰りのロバートなるものを演じて悦にいっていたのだが、マークを恨むケイリーがこの機会を利用して殺したものだった。

作者は「熊のプーサン」の作家としても有名だそうだ。そのせいか、何となく暖かみのある推理小説である。話しの進め方も一つの殺人事件を徹底して追及して行く形で、無理が無く読みやすい。作者の推理小説に対する考え方も面白い。
1、密室から殺人犯がどう逃げのびたかよりも、どんな方法で侵入したかの方が面白い。
2、推理小説に恋愛描写はなくもがなだ。
3、探偵も犯人も、われわれの一人である素人であって欲しい。
4、ワトソンの役割を演じる人物を使った方が、推理の過程がわかりやすく説明出来る。