暁の死線      ウイリアム・アイリッシュ

創元推理文庫 DEADLINE AT DAWN 稲葉 明雄 訳

 大都会ニューヨークのダンサー、ブリッキーの前に現れた風来坊青年、クイン。彼女はいつの間にか彼が気になりだし、聞き出してみると同じ故郷。すっかり気が合ってしまい、大都会と言う魔物に捕らえられ、身動きとれなくなっていた二人、彼らは故郷に戻り再出発をはかろうと決心する。
 しかし配管工をやっていた彼は金につまり、お得意さんの居間の金庫から金を持ち出して来てしまっていた。長距離バスの出発は明日の朝の6時、まず盗んだ金を元の金庫に返す。ところが居間の暗闇の中には、ピストルで撃ちぬかれた男の死体。わずかな手がかりから、捕らえた男は、自分の子供が産まれるからおどおどしていたのだったし、ピストルを放ったと証言した女の相手は別の相手だったり失敗続き。
 時間はどんどんすぎて行く。しかしついにブリッキーが、殺された男を密かに強請っていた男女2人組を発見。危うく殺されかけるが 、最後にクインが駆けつけ助ける。犯人二人を証拠の品とともに縛って放置し、二人は手に手をとってバスに・・・。

 最初の二人が意気投合するまでの語りが素晴らしい。こういう書き方を私もできたらと思う。途中の失敗談は、読者とすればなんだかだまされたみたいだけれど、後半の盛り上げにつなげるためと解釈すれば許せるか。

 都会について・・・・表現
「・・・その都会こそが曲者なのよ。あんたなんか、都会と言ったって、地図の上にある場所としか考えていないでしょう。ところがあたしには敵としか思えないのよ。決して思い違いじゃないこともわかっている。都会は悪辣で、誰だって打ち負かしてしまうのよ。あたしはいま、その都会に首根っこを押さえつけられて、身動きがならないの。そのために逃げ出しもならないでいるのよ。」
「見張られているからよ。都会には千も目があるのよ。通りを一つ横切るたびに、どこか、奥の方に見えない目が隠れていて、あたしたちを監視し、ウインクを送っているみたいなの。その目は絶対にくらませないわ。あたしたちがこっそり逃げだそうとしているのを知っているんだわ。隙さえあれば罠にかけてやろうとねらっているのよ。」
 章のタイトルについて。
各章のタイトルは小説のムードをかもしだすものだから凝っているものが多いけれど 「時計の文字盤」

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