新潮文庫 SAVAGES 山本 やよい 訳
ネクサス鉱業インターナショナルは、社長アーサー・グレアムを中心に一族が権力を握り、家族ともども皆満ち足りた生活をしていた。ニューカレドニア沖のパウイ島でニッケル、クロムなどを大量に産する鉱山が見つかり、同社は革命以前の政府時代から採掘権獲得のための交渉を続けていた。今回最終的な交渉をするため、オーストラリア支社長ハリーの導きで社長をはじめとし、一族6組の夫婦が同地に赴いた。
ところが男たちが交渉をし、女たちがジャングルツアーを楽しんでいる最中に、前軍最高司令官ラーキ将軍が反乱を起こした。女たちがホテルに戻ると、男たちがホテルの前庭で次々と射殺されているところだった。観光船ルイーズ号の船長と五人の女たちは、あわてて逃げ出す。捜索隊が出るのを怖れて、自分たちが死んだと思わせるために、ルイーズ号を焼く。
一行は、ジャングルの中で奇妙な共同生活を始める。アメリカではわがまま一杯であった彼女たちは、諍いを繰り返すが、次第に生き延びるために、最低限の生活をする術に次第に習熟してゆく。護身術も船長から習う。同時に筏を作り、海流に乗ってニューギニアに脱出しようと試みる。しかし三ヶ月にわたる雨期がやってきて頓挫してしまった。この辺の苦労話が実に面白い。
雨期あけ、彼らは再び筏による脱出を考える。しかしこの間に船長は病気のために死んでしまった。彼らが生活している一帯は、立ち入り禁止地域になっていたが、時折兵士が現れ、やむなく殺さざるを得なくなる場合もあった。一方ハリーは行方不明になった幹部を求めてラーキ将軍と交渉するがらちがあかない。次期社長を狙うアメリカのジェリーからも捜査打ち切りと採掘権交渉の終結を求められるが、彼は彼らの行方が分かるまではと、がんばり続ける。
女たちが絶望の淵に追いやられた頃、一艘の軍事船がのんびりと浜にやってきた。彼らはこれを奪い川を下って海に脱出する。しかし船を嵐でひっくり返したからエンジンも荷物もなくなってしまった。ダイヤモンドの指輪を餌に魚を捕ろうとすれば、鮫がよってくる。わずかに残った飲み水はすぐなくなってしまう。海水を飲んで脱水症状に陥るスージー、虚脱状態になるシルヴァーナ、人肉を食う夢にさいなまれるパテイやアニー、死が次第にせまってくる・・・。
非常に良くできたエンタテイメント小説、サバイバルゲームの楽しみを存分に与えてくれる。経験があるわけではないのに、情報だけでこれだけのリアリテイを持った小説を書けるのは素晴らしいと思った。また作者は、デザインの勉強もしているらしく、服装、色彩などの描写が素晴らしく臨場感があふれている。ついでにこの小説を読むと蛇や蛙や亀など何でも食べられそうに見えてくる?
なおパウイ島はもちろん架空の島、地図で調べたら海の上でした。
・ジャングルの掟「赤いものは決して食べない。」(上410P)
・鱗のない魚とか、棘や針に覆われた魚を食うと、たちまち気分が悪くなる。派手な色の魚や、水から出すと風船みたいに膨れる魚も同じ(上506P)
r990907