アメリカ銃の謎        エラリー・クイーン


創元推理文庫  THE AMERICAN GUN MUSTERY  井上勇訳

 ニューヨークのクイーン父子は、コロシアムで行われるロデオの大会を見に行った。前口上はバック・ホーンで、銃がうまいと評判の男。次いでゲートに現れた四十の騎乗のカウボーイたちがコースを回り始め、一斉に銃を抜きぶっ放した。次の瞬間、バック・ホーンが馬からおち、馬蹄に蹂躙された死体となってころがった。
 カウボーイたちが持っていた銃は皆45口径、ところがバック・ホーンを撃ち抜いた銃弾は25口径用。実はカウボーイたちの中に新聞記者が紛れ込んでおり、彼は25口径銃を持っていたが、発射した形跡は認められなかった。観客の持つ銃が集められたが、こちらにも25口径はなかった。ホーンは、2丁拳銃が得意で普段2丁の銃を有していたが、なぜかショウには1丁の銃のみを携帯していた。また数年前映画で失敗し、田舎に引っ込んでいたが、この大会で復帰をかけていたようだった。ホーンには前々日の夕方不振な訪問者があった。事件の模様をカービー少佐が撮影していた。
 コロシアムでは、ボクシングの世界選手権が開かれ挑戦者のブラックがハーカーを倒した。ところが彼が気にする人気女優のマラ・ゲイは、彼女の夫は賭博屋を開くジュリアン・ハンター。ホーンはその賭博屋で大敗したせいか、預金が全額引き出されていた。娘のキットによれば、さらに死んだので多額の保険金が入ると言うことだ。
 次のロデオ大会は、ビル・グラントの息子で、ホーンの娘キットの恋人、巻き毛の三十歳の誕生日に次いで行われた。ところが今度は先頭に立ったウッデイが、ホーンと同じ場所で同じ様に撃たれて死亡した。巻き毛の遺産の金が消えたが、ウッデイの引き出しからみつかった。最近入ったホーンそっくりのカウボーイ、ペンジー・ミラーが消え、部屋から犯罪に使ったと思われる25口径の銃が見つかった。
さて読者への挑戦!見知らぬ男殺人の謎を解いてくれ給え!
 クイーンはミラーの元で発見された25口径銃を、グラントの部屋で見つかったように見せ、罠をはるとあのベンジー・ミラーが現れた。「あなたはミラーなどではなく、バック・ホーンその人ですね。」以下エラリーの解説。
 写真から撃たれた時、被害者の体が傾いており、傷口からカウボーイの一人が犯人と考えられる、紐のかかっていたバンドの穴がホーンの普段使う場所と違う、銃声が一度で被害者が倒れているから、犯人は2丁拳銃が使えて射撃が非常にうまい、などから最初に殺されたバック・ホーンは、替え玉でバックホーン自身に撃たれたと考えた。おそらく昔、映画で危険なときに自分の役をやってくれた替え玉を呼び寄せ、騙して利用したのだろう。さらにそれに気づいて強請り、巻き毛の遺産の金を盗ませたウッデイも殺すことになった・・・・。結局ホーンは生きているより死んだことにして、保険金を受け取る方が価値があると考え、この大バクチをうったのだ。

 話としては非常に面白い。一度の銃声しかしない、銃を調べたら全員45口径だった、ところが犠牲者が撃たれたのは25口径、よって2丁拳銃の男が犯人、25口径の銃は小さいから馬の口の中に隠した、などというのだが、まさにこちらは口をあんぐり!しかしそんなにうまく行くのか、と考えさせるのも事実。義理の娘も仲間も、最初に殺された男が「顔がきれい」だったにも関わらず、替え玉と分からない・・・・その言い訳に作者は双子の兄弟だったかも知れない、と述べるていのだが、そうだとすると犯人は超冷酷!と言うことになる。自分が殺された様に見せたいだけなら、あかの他人におなじ腹を着せ、顔を潰して殺せばいいではないか。
 それからこの作品に限って言うと事件解明の為の条件は「読者への挑戦」段階で必ずしもすべてが示されているわけではない気がする。バンドの穴の話などがそれだ。
(1933 28)
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