バースへの帰還        ピーター・ラヴゼイ


早川書房ハードカバー THE SUMMONS 山本やよい 訳

 辣腕刑事ピーター・ダイヤモンドは、ふとしたことで上司と喧嘩、エイヴォン・アンド・サマセット暑を追い出され、失職の身。ところが突然、二人の刑事が深夜来訪、ベッドから連れ出され、強引に元の職場に連れて行かれた。殺人犯マウントジョイが脱獄し、副所長の娘サマンサを誘拐、交渉相手にダイヤモンドを指名してきたのだという。
 4年前バースで、スウエーデン人女性記者ブリット・ストランドが、アパートで口に赤い薔薇をつめこまれて刺殺された事件があった。ダイヤモンドは、彼女を慕い、殺された頃彼女を訪問したならず者マウントジョイを逮捕した。頼み込まれて、機会があれば復職したいと考えていたので引き受け、交渉にのぞむとマウントジョイは「おれはやっていない。あの事件をもう一度洗い直してくれ。」
 そんな馬鹿な、と思いながら女性警部ジュリーを補助者の得て、容疑者を再調査。GBなる浮浪者がマウントジョイが現場を去った後、何者かが彼女の部屋に侵入したことを証言し、誤認逮捕が有力になってきた。ブリットに使われていたカメラマンプルー・ショーター、音楽プロデユーサージェイク・ピンカートン、遊び人風で馬術が得意のマーカス・マーテイン、聞き込みをする内に彼女のアパートの大家のウインストン・ビリントンやGB自身も怪しいことが分かった。
 大家の妻ビリントンが亭主と喧嘩し、重傷を負わせてしまった。「前の証言の時にはテネリーフェに行っていた、と言ったが嘘です。夫は一足先に帰った。我が家では薔薇を栽培している。夫はよくチョコレートだの薔薇だのを彼女にプレゼントし気をひいていた。夫が犯人に決まっている。」しかし、偶然からウインストンは別の女性と過ごしていたと判明、アリバイが出来てしまった。捜査の過程で被害者が持っていた車が登録はそのままで消えていること、彼女は殺された当時は、酒を飲まなかったが、昔はいけるくちだったことが明らかになった。
 マーカス・マーテインも肉体関係だけなどとうそぶいていたが、実際は単に振られただけ、ただアリバイはしっかりしていた。GBは麻薬の売人だったがアリバイはしっかり。ピンカートンはのらりくらり。
 マウントジョイとの再度の対決で、ダイヤモンドは、解決までの時間を切られる。しかも彼が廃墟になったエンパイヤホテルにサマンサと共に立てこもっていることが判明し、暑内部には武力行使による解決機運が高まってきた。
 しかし最後の賭で、コンクウエルの森の中にあるピンカートンのレコーデイング・スタジオを捜査。ピンカートンは不在だったが、あの行方不明になっていた被害者の車を見つけた。しかも古びた車のボンネットは大きくへこんでいた。
 これが発端で事件は解決。ダイヤモンドは復職する事が出来た。全体劇は、愛児をひき逃げされた女性の復讐劇。母親は、愛児の墓に定期的に供えられる赤い薔薇から、犯人を特定したのだった。
 読み終わって良い作品を読んだ、と感じる書である。数々の名作を書いた作者もすでに還暦近く、それだけに話の進め方にも登場人物の特徴づけにも無理が無くなかなかに味わいのある刑事物である。ただ誤認逮捕に至った経過、ダイヤモンドの反省といった点にもう少し言及してほしかった気がする。


・薔薇が供えられたのは、血まみれの彼女自身に、自分は冷酷でも無情でもないと言い聞かせるためにおいていっただけ。でも、冷酷な女だわ。出なきゃ、死にかけてる子を路上に置き去りにしないもの。彼女の人生は何の支障もなく続いていった。精力的な仕事、美貌、旅行、恋人たち。年に1回、1ダースの薔薇を買うくらいじゃ償いにならないわよ。(340P)

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