ブルー・ドレスの女      ウオルター・モズリイ


ハヤカワ・ミステリ文庫 DEVIL IN A BLUE DRESS 坂本憲一訳

時代は1948年、普通は黒人しか来ないもぐり酒場<ジョッピーの店>に、白い麻のシャツとスーツ、パナマ帽子をかぶった白人のデウイット・オールブライトが入ってきた。彼は店主ジョッピー・ジャグの旧友らしい。おれこと黒人機械工イージー・ローリンズは、オールブライトからダフネ・モネという若い女を捜して、居場所を報告してくれ、と前金を渡される。
おれが聞き込みを始めると、おまわりがおれの周囲を動き始め、少し前に起こったハワード・グリーンの時と同じようなスタイルで、友人デユプリーの愛人コレッタが殺された。なぜだ!そして探している当のダフネがおれに連絡してきて、恋人のフランク・グリーンを探して暮れ、と妙な依頼。面談の帰り、今度はダフネの友人でぽん引きのリチャード・マギーの死体に遭遇。オールブライトに報告すると、こちらもフランクを探せ!ダフネは再び消えた。
どうも状況がわからぬおれは、オールブライトがよこした名刺をたよりに大元の依頼主ライオン・インヴェストメンツ社の社長トッド・カーターを尋ねる。こいつは我々黒人との隔たりを認識すらせず、わたしをいささかも気にしていない最悪の人種差別主義者だ。カーターはブルードレスの女、ダフネを愛していたが、彼女は3万ドルの金と共に消えた、探してほしい、と言うのだ。
酒の密売ルートからおれはフランクを探し当てるが、襲われ、絶対絶命、しかし旧友のマウスが救ってくれた。再びダフネからの連絡で落ち合い、愛し合う。しかし彼女はカーターの元に戻ることを拒む。彼女はカーターについていう。「人はだれかをほんとに深く知ると、去らざるをえなくなる。」おれはマウスと一緒に次々に殺人者を暴き、真相に迫る。殺人はあの3万ドルを廻って行われていたのだ。犯人たちが次々に倒れて行く。

最後にマウスがダフネについて述べるくだりが、物語を締めくくっている。
「あいつは白人になりたいのさ。生れてからずっと、彼女は世間の連中に言われてきた。なんと肌が白くて美人なんでしょう、とね。でも、彼女はいつだって分かっていた。白人がもってるものを自分が持ちえないってことが。だから、白人のふりをしては、失敗する。あいつは白人の男を愛することが出来るが、相手が愛せるのは、彼女を白人と思っているからにすぎない。」
彼は、またイージーに以下のように言う。
「おまえたちはどちらも、自分が貧しい黒んぼだって事が分かっていない。ところが黒んぼはあるがままの自分を受け入れないかぎり、幸福になれっこないんだ。」
ジョン・ポールの「夜の熱気の中で」を思い出しながら読んだ。同作品は黒人捜査官の主人公テイップスが、人種偏見の激しい南部の町で、さまざまな障害を乗り越えて、事件を解決して行く過程に非常に魅力があった。さてこちらは作者も主人公も黒人、白人社会で生きる黒人の悲哀を訴え、改めて自分たちのアイデンテテイを確認しようとした作品と言えようか。
沢山の殺人事件が起こるが、その犯人探しなどは作者にとってはどうでも良いつけたりのように見える。黒人社会の中で少し格好良く、良心的に生きる男の探偵活動を描き、自分自身の思いを述べたかったように見える。
000906